第4回反骨精神のために多少は必要…体罰繰り返した元教員の思いこみと後悔

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 「逃げるな!」

 数年近く前、高校のある部活動の練習試合。顧問だった男性は、一人の部員に大きな声をかけ続けた。

 「チームを引っ張っていく主力選手に」と、期待をかけていた部員だった。しかし、試合中に何度もミスをした。プレーから逃げているように見えた。

 何よりチャンスで消極的なのが気になった。練習などでは常に「逃げればチームの足を引っ張ることになる」と言い聞かせてきた。練習でやってきたことに挑戦しようとしない。

 「気合をいれてやらなければ」

 指導が必要だと思った。

 タイムをとって、この部員と向き合った。男性の目をじっと見ている。

 平手でほおをたたいた。「パチン」と音が響いた。

 部員は口を真一文字にして、こちらを見た。

 2回、3回と手が無意識に出た。体が勝手に動いている感じだった。これまでも練習中などに人前で殴ることはあった。

 周囲からどう見られていても抵抗はなかった。

 部員はその後、普段通りにプレーした。男性の目には、プレーが積極的になったように思えた。

男性はいま、体罰をしたことに後悔の念を抱いています。なぜたたいてしまったのか。部活指導者を暴力に駆り立てるものとは。

 翌日朝、部員たちが体罰のことを話題にしていた。

 男性は、すぐに学校の上司に電話した。

 「体罰をしてしまいました…

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    末冨芳
    (日本大学文理学部教授)
    2022年12月20日18時4分 投稿
    【視点】

    この元加害者教員と同様に「多少の体罰は必要だ」という歪んだ認知を持つ体育会系大学生は今も一定数います。体罰や暴力の再生産という悪循環が断ち切れない原因がここにあります。 体罰で諭旨免職という経緯を率直に明かされた重要な記事です。加害者

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    島沢優子
    (ジャーナリスト・チームコンサルタント)
    2022年12月20日20時5分 投稿
    【視点】

     記事で「チャンスで消極的なのが気になった」「練習でやってきたことに挑戦しようとしない」と選手への不満を語っています。つまり他罰的です。しかし、消極的になる、は、イコール、トライできないわけで、元を辿ればミスすると怒ったり不機嫌になる指導者

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