「エルピス」は絶対に放送する 企画から6年、佐野亜裕美さんの決意
放送中のドラマ「エルピス―希望、あるいは災い―」(フジ系、関西テレビ制作)が話題だ。テレビ局の人々が死刑囚の冤罪(えんざい)疑惑の真相を懸命に追う姿とともに、権力を前に萎縮するマスコミの実態も赤裸々に描く。プロデューサー佐野亜裕美さん(40)が、朝ドラ「カーネーション」などで高い評価を受けた脚本家の渡辺あやさん(52)と6年ごしで温めてきた作品だ。佐野さんは、これまでも会話劇の名手、坂元裕二さん(55)の脚本による「カルテット」(TBS系、2017年)や「大豆田とわ子と三人の元夫」(21年、フジ系、関西テレビ制作)など、ドラマ好きをうならせる作品を送り出してきた。佐野さんのドラマ作りへの思いとは?
――放送中の「エルピス」は企画から放送まで6年もかかったそうですね。
脚本家の渡辺あやさんに初めて会ったのは2016年、ドラマ「カルテット」を準備していたときです。以来、島根県に暮らすあやさんの所に20回ほど行きました。打ち合わせといってもほとんどが雑談なんですけど。
当初のテーマは「ラブコメ」で、企画を2人でいろいろ考えたのですが、話がいっこうに弾まない。ところが雑談で、なぜ、最近、日本の社会にこんなに「忖度(そんたく)」が蔓延(まんえん)しているのだろう、なぜきちんとした審議や説明がなされないまま政治が行われているんだろうと、と話していると、大いに盛り上がったんです。
あやさんに本当は何がつくりたいのかを、問われました。自分が本当に面白いと思えるテーマは何かを考え、行き着いたのが、実在の冤罪(えんざい)事件に着想を得たテーマです。それが「エルピス」でした。学生時代、弁護士をめざした時期もあり、司法や事件に関心があったのです。
日本の司法制度は、取り調べに弁護士がたちあえないとか、再審請求がとても高い壁があるとか、海外の先進国と比べるととても差があると思うんです。そうした問題意識が根底にあります。
佐野さんは「ずっと自分には価値がないと思い続けてきた」と語ります。そんなときに出会ったのが脚本家の渡辺あやさんでした。それはどんな出会いだったのか。また、「エルピス」や「カルテット」のキャスティングについても語ってくれました。さらに記事の最後では、渡辺さんに、佐野さんについて聞きました。
「エルピス」のことを忘れたことなかった
――企画は通らなかった。
今、思うと通らなくて当然で…
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