巨大おけをバイクがグルグル 北海道の名物興行ご覧あれ

本田大次郎
【動画】バイクが壁を疾走 北海道名物「オートバイサーカス」=戸田拓撮影
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 直径9メートル、高さ4メートルの巨大な「木のおけ」の壁を、オートバイが疾走する。「ワールドオートバイサーカス」。北海道のお祭りの名物興行だ。今年も、道内では旭川市でのお祭りを皮切りに、巡業が始まった。

 4~6日にあった旭川の護国神社のお祭り。約300店もの露店が並ぶ常磐公園のほぼ中央に、カラフルな大型テントが立つ。

 板敷きの坂道を上がってテントの中に入ると、「ホール」と呼ばれるおけの縁に出る。見下ろせば垂直の4メートルの壁。地面と壁との境目には、狭い板が斜めに360度、敷かれている。

 団長の藤田昭範さん(45)が、400ccのバイクに乗って登場する。斜めになった板を1周したと思うと、一気に垂直の壁を駆け上がった。時速約40キロ。1周約3秒。バイクが近づくたび、木製のホールのガタガタという強い振動で、体が震える。

 観客がホールの内側に腕を伸ばし、おひねりの千円を差し出す。藤田さんが瞬時に軌道を考え、2~3周したところで素早く千円をつかみ取る。一瞬の出来事だ。

 さらに、両手を離して走ったり、両手に持った旗を頭からスポッとかぶって目隠し状態で走ったり。そのたびに、爆音とともに大歓声がテントの外まで響き渡る。

 札幌市出身の藤田さんはキグレサーカスの裏方バイトをしたのがきっかけで、高校卒業後、同サーカスに入団した。そこで覚えたのが、オートバイの曲芸。おりのような大きな鉄球の中を走る技だ。さらに空中ブランコもこなし、サーカスを盛り上げた。

 北海道にはホールを使ったオートバイサーカスが、戦前からあったという。約10年前、藤田さんはそのオートバイサーカスを引き継いだ。「鉄球より、ホールの方が難しい。鉄球は徐々に角度が増していくが、ホールは一気に垂直になる。それに木なので、滑りやすい」

 興行は、天気や人の入りをみながら1日10回以上。1回は7~8分。重力に逆らい、強い遠心力が体にかかり続けるので、興行期間中は毎日が筋肉痛だ。それでも「お客さんが、ワッと沸くと、うれしいですから」。

 国内でいま、垂直の「ホール」を走るオートバイサーカスは「うちだけ」という。ただ、世界各地に、同じような曲芸をする人たちがいる。「フランスのチームとも、SNSでつながっているんですよ」。そのチームが来日したことがあるが、北海道での興行と重なり、会えなかったのが残念だった。

 入場料は大人700円、子ども500円。旭川の後は、14~16日の札幌まつりで興行する。その後は8月中旬に網走市、9月上旬に千歳市、9月下旬に栗山町の予定。北海道外では、春の弘前さくらまつり(青森県)だけ。(本田大次郎)

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