朝日新聞デジタル：川崎総合科学（３） - 神奈川

川崎総合科学（３）

ブルーインパルス機の前に立つ山崎

ユニホーム姿の鈴木

■技術の学舎　パイロット・レーサー誕生

　多摩川沿いに立つ校舎は、１号館が１５階建てで、公立高校としては全国初の高層建築という。屋上はヘリポートで、１５階の食堂から、羽田空港やレインボーブリッジ、房総半島も見渡せる。２号館と３号館は実習棟とも呼ばれ、工具や先端機器が並ぶ。こうした学舎（まなびや）から、パイロットやレーサーも誕生した。

　航空自衛隊のアクロバットチーム「ブルーインパルス」のパイロット、山崎雄太（３３、２００３年卒）は松島基地（宮城県）から２月、金華山沖の訓練空域に飛び立った。訓練飛行は１日３回。任務は空自の魅力を国内に知らせるだけでなく、「これだけのことが日本のパイロットも出来るんだぞ、と外国に見せる意味もある」。並んで飛ぶと、チームの他機との距離は９０センチになることもある。

　１１階に教室、自習室も備えた科学科が「勉強に集中できる」と選んだ。当初は進学希望だったが、羽田で発着を繰り返す航空機を見て、「パイロットもいいな」と思うようになった。調べてみて、空自が航空会社に入るより、早くパイロットになれそうだと考えた。空自パイロットは「みんなが、なれるわけではない」。クラスで大学に進まなかったのは自分だけだった。

　防衛省の養成機関の同期７０人は、試験に通らなかったりやめたりして、今も操縦桿（・・かん）を握るのは半分。沖縄勤務時は、戦闘機での緊急発進が頻繁にあり、国籍不明機を何度も見た。ブルーインパルスでは、１年の３分の１が出張で、各地を飛び回る。

　ブルーインパルスの在籍期間は３年間で、今年が最終の年。夏にかけて、自身の経験と技術を後任者に引き継ぐ。パイロットは危険と隣り合わせだからこそ、「安全第一」「基本の徹底」が大事だと教えている。

　自転車ロードレースのプロチーム「宇都宮ブリッツェン」所属のロードレーサー、鈴木譲（３２、０４年卒）は宇都宮市を拠点に活動する。今年は副キャプテン。沖縄で２月２５日にあった大会で優勝するなど、国内プロツアーでは今月１８日現在、個人総合で５位につける。

　「機械いじりが好き。将来は車の整備士もいいかな」と電子機械科に進んだ。中学時代の部活動はサッカーだったが、高校ではやらなかった。家と学校の往復。悶々（もんもん）としていた時、担任に「ものつくり同好会」への参加を勧められた。実習棟の工具が自由に使えた。

　実習棟の片隅である日、サドルが外れた古ぼけた競技用自転車を見つけた。「直そう」としたが、サドル部分と本体をつなぐ管がさびて硬く、外せなかった。担任に相談すると「削り出すしかない」。同じ直径のドリルで壊し、外してくれた。

　乗ると、「風を感じた」。個人で３年の時に出たレースは転倒したが壮快で、大学でも競技を続けることにした。大学２年でプロチームに入り、退学してプロとしての道を歩む。

　レースの勝敗は、身体能力の高さだけではなく、機械への理解と知識が欠かせない。機械のトラブルで遅れる選手も多いからだ。「理解と知識」で言えば、２０代から一歩、周囲より前にいたと思う。例えばベアリングの構造は、高校時代ですでに学んでいた。「高校で勉強したことが、自転車人生の原点。総合科学じゃなかったら、あの自転車、直せなかったですから」

PR情報

あのニュース、あの話題
選りすぐりの記事をテーマごとに

PR注目情報

注目コンテンツ

ご案内

写真

フォトギャラリー