夏目漱石「三四郎」(第三十八回)四の十
二方(にほう)は生垣で仕切ってある。四角な庭は十坪(とつぼ)に足りない。三四郎はこの狭い囲(かこい)の中に立(たっ)た池の女を見るや否(いな)や、忽(たちま)ち悟った。――花は必ず剪(きっ)て、瓶裏(へいり)に眺むべきものである。
この時三四郎の腰は縁側を離れた。女は折戸(おりど)を離れた。
「失礼で御座いますが……」…
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