夏目漱石「三四郎」(第十一回)二の三

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 その時野々宮君は三四郎に、「覗いて御覧なさい」と勧めた。三四郎は面白半分、石の台の二、三間(げん)手前にある望遠鏡の側(そば)へ行って右の眼をあてがったが、何にも見えない。野々宮君は「どうです、見えますか」と聞く。「一向(いっこう)見えません」と答えると、「うんまだ蓋(ふた)が取らずにあった」といいながら、椅子を立って望遠鏡の先に被(かぶ)せてあるものを除(の)けてくれた。

 見ると、ただ輪廓(りんかく)のぼんやりした明るいなかに、物差の度盛(どもり)がある。下に2の字が出た。野々宮君がまた「どうです」と聞いた。「2の字が見えます」というと、「今に動きます」といいながら向(むこう)へ廻って何かしているようであった。

 やがて度盛が明るい中で動き…

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