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05月20日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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(核リポート)閉鎖原発はまだ生きていた

写真:ふげん全景=2010年6月撮影、日本原子力研究開発機構提供拡大ふげん全景=2010年6月撮影、日本原子力研究開発機構提供

写真:ガス切断器(手動)による切断=2008年8月撮影、日本原子力研究開発機構提供拡大ガス切断器(手動)による切断=2008年8月撮影、日本原子力研究開発機構提供

■廃炉への旅:1

 【国末憲人】「廃炉」という言葉を、日々のニュースで頻繁に耳にするようになった。その大きな理由は、言うまでもなく福島第一原発事故だ。

 「廃炉に何年かかるのか」

 「その費用は」

 被災地以外の場所で記憶が薄れ始めているとはいえ、事故の処理は市民の大きな関心事であり続ける。

 また、事故をきっかけに国内各地の原発の安全性が問い直され、不安が残る原発の「廃炉」も取りざたされるようにもなった。

 ただ、振り返ってみると、福島第一原発に限らず、わが国の原発は年老いている。1970年代に運転を始めた相当数に、寿命が次第に近づいている。あと何年かすると、いくつかの原発で廃炉のプロセスを具体的に考える必要が出てくるだろう。福島第一原発事故がたとえなかったとしても、あるいはその原発が活断層の上に建てられていなかったとしても、いったん原発を持った以上、廃炉は避けて通れない過程だ。

 迫り来る「廃炉の時代」を前に、世界で何が起きているのか。私たちは何ができて、何ができていないのか。これから何が必要なのか。

 そのような問題を、廃炉の過程を追うことによって考えてみたいと思った。主な内容は、朝日新聞の日曜版「GLOBE」の特集「廃炉の時代」(7月21日付)で報告したが、その取材過程も含めた記録の一部をここで紹介したい。

■警戒感ありあり

 廃炉はいわば、原発の葬式だ。厳粛に、淡々と、しかし周囲に迷惑をかけることなく、ハプニングを起こさないよう、執りおこなう必要がある。重要だが、面倒で、地味な営みだ。特段関係のある人以外はあまり関心を持たない種類の営みかも知れない。

 しかし、すべてを葬儀屋に任せきりにしてしまうと、とんでもない費用を請求されるかもしれない。生前にご恩を受けてきた親族や知人と、専門知識を持つ葬儀屋とが協力してこそ、葬儀はスムーズに進められる。廃炉にもまた、専門知識を持つ運営主体と同時に、電気を享受してきた市民自身もかかわる姿勢が欠かせない。

 まず国内の現場を見ようと考えた。国内で現在、廃炉(廃止措置)にかかっている原発は4基。日本原電東海発電所(茨城県東海村)、日本原子力研究開発機構の新型転換炉「ふげん」(福井県敦賀市)、中部電力浜岡原発1、2号機(いずれも静岡県御前崎市)だ。ちなみに福島第一原発は、俗に「廃炉」と呼ぶものの、実際の廃炉の過程にはほど遠い段階にある。廃炉までに越えなければならない課題が山積しているからだ。

 4基に取材を申し込んだ。「受け入れた例がない」「見せるべきものがない」などと、いくつかはとりつく島もない。原発に対する世論が厳しい昨今、「何か悪口を書かれるのでは」との警戒感がありありだ。最終的には4基すべてを訪問することができたのだが、その中で、訪問依頼後すぐに受け入れの回答をしてきたのが「ふげん」だった。4月半ば、必要な手続きを済ませ、現地に向かった。

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