首都大学東京准教授の渡辺英徳さんが発表した「マスメディア・カバレッジ・マップ」。報道されなかった被災地からも、ツイッターで被害を訴える発信があったとみられるという=渡辺さん提供 |
60組以上の大学や企業、個人が研究成果を発表した「東日本大震災ビッグデータワークショップ」=10月28日、東京都文京区の東京大学、武井宏之撮影 |
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【奥山晶二郎】今回の衆院選で、朝日新聞新年企画取材班が試みている短文投稿サイト「ツイッター」を流れるつぶやきの分析。こうした「ビッグデータ」と呼ばれるインターネット時代の膨大な情報を活用する動きは、様々な分野で加速している。東日本大震災を教訓に次の巨大災害に備えようとする取り組みもそのひとつだ。
〈特集〉ビリオメディア今年9〜10月に行われた「東日本大震災ビッグデータワークショップ」。グーグル、ツイッター、ゼンリンデータコム、ホンダなど8社が、検索キーワードや全地球測位システム(GPS)から得られた人の動きなどのデータを無償提供。マスメディアからはNHKと朝日新聞がデータ提供に参加した。
提供データは2011年3月11日の震災発生から1週間分で、ツイッターのつぶやきだけで約1億8千万件に上る。呼びかけに応じた約100人の研究者らがこれらのデータを使い、震災直後の情報の流れを検証した。
首都大学東京准教授の渡辺英徳さん(情報デザイン学)はツイッターのつぶやきと、NHKや民放のテレビニュース、朝日新聞記事に取り上げられた被災地の地名を電子地図に落とし込み、報道から抜け落ちた被災地の存在を一目でわかるようにした。
10月28日に東京大学であった報告会では、スクリーンに電子地図が映し出され、津波や揺れの被害が報道された地域が赤くともった。だが、大きな被害を受けた地域は他にもあったという。こうした「報道空白域」からツイッターで発信されたとみられる言葉が画面に浮かび上がった。「工場が液状化現象で壊滅的なダメージが受けました」などと訴えていた。
東日本大震災では、ツイッターなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が安否情報に役立つツールとして脚光を浴びた。渡辺さんは「ビッグデータを電子地図に落とし込むことで、災害時に報道空白域の存在をマスメディアに伝えられる。ネット上で公開すれば、一般の人が補完する取り組みにもつなげられる」と話す。
SNSによって誤った情報(デマ)が瞬時に広がってしまう問題を分析する専門家らも目立った。震災直後にコスモ石油千葉製油所で火災が起きた際、「有害物質を含んだ雨が降る」というデマが流れたケースなどだ。