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【国吉美香】東日本大震災の被災地で、犠牲者9人の遺体が取り違えられて別の遺族に引き渡されていたことが分かった。遺族は遺体を少しでも早く引き取りたいが、警察のDNA型鑑定が追いつかなかったことが背景にある。
遺族の申し出や、引き渡し後も続けてきた警察の照合作業で判明した。取り違えは岩手県で8人おり、陸前高田市4人、大槌町2人、釜石市1人、大船渡市1人。60〜90代の男女の遺体が震災直後から昨年7月にかけて誤って引き渡された。宮城県でも昨年3月、山元町で見つかった遺体が取り違えられた。
岩手県警によると、震災直後、遺体安置所に器具がないなどの理由でDNA型鑑定が行き届かなかった。遺体の傷みが少なく、手術跡や運転免許証などがあって遺族が「身内だ」と強く主張した場合、鑑定せずに引き渡した。その後、別の遺族から「自分の家族では」と申し出があり、DNA型鑑定をして取り違えが判明したという。
1人は子供からDNAの提供を受けて鑑定し、完全に特定できなかったものの身体的特徴に一致点が多く、遺体を引き渡した。しかし、県警が行方不明者を捜す遺族のDNA型情報をデータベース化して照合作業を続けていたところ、誤っていたことが発覚した。
県警が遺族に取り違えを説明しても、「絶対に私の親です」と納得しない遺族もいた。足利郁男捜査1課次長は「震災直後は混乱していたが、取り違えは反省したい。これからも身元特定へ捜査を続ける」と話す。