12日に実施された兵庫県内の公立高校入試の理科で、「県教委発表の解答とは別の正解がある」「問題が成立していない」などの指摘が、採点する複数の高校から県教委に寄せられた。県教委はこれを受け、高校側が主張する別の解答も「正解」として扱う。しかし、出題ミスにはあたらないとし、全員正解の処置は取らず、公表もしないという。
問題となっている設問は大問IIIの1の(4)。ばねを用いた実験で、人の手がおもりをつけたばねを持ち上げる際、「人の手がした仕事は何J(ジュール)か、求めなさい」と尋ねる内容。配点は100点満点のうち2点。
県教委によると、この実験では、ばねが伸びて、おもりが持ち上がる。ばねを伸ばす仕事は「0.025J」で、おもりを持ち上げる仕事は「0.01J」。本来の正解は、この二つを足した「0.035J」という。
しかし、「ばねに対して人の手がする仕事(弾性力による位置エネルギー)」は、中学校の学習指導要領には含まれていないという。このため県教委は、人の手がおもりに対してした仕事の「0.01J」が、「中学生レベルの正解」として発表した。
これに対し、高校関係者らからは「それならば、『人の手がおもりに対してした仕事は何Jか、求めなさい』と正確に問うべきで、問題文が不適切だ」という批判が出ている。
県教委は「誤解を生む可能性のある表現だったが、問題文としては成立しており、前後の問題から解答を導き出せる」と判断。中学生レベルの解答の「0.01J」でも、本来の解答である「0.035J」でもいずれも正解として扱うことにしたという。
中学生には事実上解けない問題を県教委は問うたことになり、明らかな出題ミスと言える。潔く認めて経緯を公表し、適切な措置を取るよう求めたい。
高校教育課によると、「0.01J(ジュール)」という解答以外に、塾通いなどで「学習が進んだ子供」(同課担当者)であれば、「0.035J」と答えることは「想定していた」という。それが事実ならば、なぜ、不適切な問題文を見直さず、放置したのだろうか。
この問題の真の正解は、「0.035J」である。それは県教委も認めている。「習った覚えはないのに、どう解けば……」と悩んだ受験生もいただろう。「中学校で学ばない部分は度外視して、答えてもらえばよかった」というのは詭弁(きべん)だ。(日比野容子)