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2011年12月1日10時0分
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「脱原発は困る」 電力労組、民主議員に組織的な陳情

 全国の電力会社や関連企業の労働組合でつくる「電力総連」が、東京電力福島第一原発の事故後、原発存続に理解を得るための組織的な陳情活動を民主党の国会議員に展開していたことが分かった。2010年の政治資金収支報告書によると、全国の電力系労組13団体が組合員らから集めた「政治活動費」は総額約7億5千万円。この資金は、主に同党議員の支援に使われ、陳情活動も支援議員を中心に行ったという。

 同党の有力議員の秘書らは「脱原発に方向転換されては、従業員の生活が困ると陳情を受けた」「票を集めてくれる存在だから、選挙を意識して対応せざるを得ない」と証言。電力総連関係者は「総連側の立場を理解してくれた議員は約80人」と見積もる。豊富な政治資金を持つ電力総連が、民主党側に影響力を行使する実態が浮かび上がった。

 収支報告書などによると、全国の電力10社と関連3社の各労組の政治団体は10年に、組合員ら約12万7千人から会費などの形で約7億5千万円の「政治活動費」を集めた。うち計約6400万円が、電力総連の政治団体「電力総連政治活動委員会」に渡っていた。

 活動委は同年、東電出身の小林正夫・民主党参院議員(比例区)の関連政治団体と選挙事務所に計2650万円、川端達夫総務相の政治団体に20万円などを献金。小林議員は同年の参院選で再選を果たした。

 電力総連や各労組の関係者によると、「政治活動費」の総額は毎年ほぼ同じ額で、各労組から活動委への提供資金は「上納金」と呼ばれる。東京で開かれる同党国会議員のパーティー券購入や選挙時の陣中見舞い、選挙活動費などに充てられるという。

 上納金を除く残りの資金は、各労組が、地元で開催される同党国会議員のパーティー券購入や、地方議員を含む選挙での活動費などに使っているという。

 ■「うちには票と人手」強気に

 電力業界では、会社と労組の関係が近く、会社は自民、労組は民主とバランスをとって関係を続けてきたとされる。

 電力総連関係者らによると、福島第一原発の事故後に電力業界と距離を置く民主党議員が増えたことに危機感を強め、対応策を検討。傘下の各労組幹部が今年5〜6月、同党議員に相次ぐ陳情活動を展開した。

 電力総連関係者は「会社がなくなれば労組もなくなる。会社の代わりに原発推進を訴えた」と明かす。

 電力総連が同党議員側に対し、強い態度に出られるのは、潤沢な「政治活動費」をもとに選挙で「票と人」を提供しているからだ。ポスター貼りから電話作戦まで選挙慣れした組合員を長期間送り込む手法などが民主党側に評価されており、電力系労組幹部は「うちは選挙に強い」と胸を張る。

 ある電力系労組では支援議員の発言をチェックし、国会などで原発に否定的な発言をした場合は、議員や秘書を地元に呼び出す。「あれはどういう意味ですか?」などと、発言の真意を問いただすためだ。この労組幹部は「うちが選挙の票と人手を持っていることを強調すると、大抵の議員は言動が慎重になる」。

 東電労組の幹部は取材に対し、「事故も収束していないし、原子力じゃないとだめなんて言えない状況だ」としながらも、次の選挙について「たとえ民主党でも、脱原発という議員は応援しない」と断言している。

 九電労組幹部は「推薦してきた議員の中には、手のひらを返すように反原発を掲げた人もいる。組合員からも『これでいいのか』との声が出ている」と話す。この幹部は永田町の議員会館で約20人の議員を回ったという。「私に『反原発』と言った人はいない。原発の推進に同意してくれていると思っている」

 民主党議員側への働きかけについて、電力総連は「労組が取り組む社会保障や雇用などの諸問題には、政治でなければ解決できないものがある。私たちの考え方に理解、協力いただける議員を支援している」と話している。

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