東京電力福島第一原発事故に伴い、国の責任で実施する放射性物質の除染について、環境省は原則として年間の追加被曝(ひばく)線量が5ミリシーベルト以上の地域を対象とする方針を固めた。都市部の側溝など、線量が局所的に飛び抜けて高く、生活への影響も大きいホットスポットは1ミリシーベルト以上とする。森林では土壌は除去せず落ち葉の回収でも対応可能とした。土壌や落ち葉などの総除去量は最大で東京ドーム23杯分の約2900万立方メートルになる。
除染基準をめぐっては、政府が8月に示した除染の緊急実施基本方針で、平常時の年間許容量とされる1ミリシーベルトを長期的に目指すとしてきた。環境省は今回、5ミリシーベルトを原則とした根拠について、それ以下の低線量地域では表土を削るなどしても効果が上がりにくいことなどを挙げた。セシウムの一部が2年で半減期を迎えることなど自然減の効果もあわせて、1ミリシーベルトを目指すという。
同省は27日、有識者による「環境回復(除染)検討会」の会合を開き、試算結果を示した。5ミリシーベルト以上の地域はすべて福島県内といい、県面積の13%に当たる約1778平方キロ。
土壌の除去は、セシウムが集まる地表から深さ約5センチまでを基本とする。森林では土壌は除去せず、文部科学省の調査などをもとに、落ち葉の回収や枝打ちで除染できるとしている。葉や枝は同じ面積当たりの除去量が土壌の5〜6分の1で済み、さらに焼却などで減量できる。対象面積の約7割を占める森林での土壌除去を回避することで総除去量を減らせるという。
都市部の側溝や雨どいなど、局所的に年間の被曝線量が高いホットスポットは、福島県と隣接する4県だけで約640平方キロあるが、高圧水で洗い流すなどの対応が中心のため、除去土壌は40万立方メートル程度にとどまると試算。仮置き場や中間貯蔵施設の規模にあまり影響がないという。
環境省はこの日の検討会で有識者らの理解が得られたとして、10月10日の次回の検討会では、除染対象の地域指定や汚染状況の調査方法、土壌の収集・運搬指針などの除染基準案を提示する方針だ。(森治文)