津波で壊滅的な被害を受けた宮城県石巻市の雄勝地区で、地元の住民らが手作りの「かわら版」を創刊した。市の広報紙が届かない市外の転居者も含め、希望者に雄勝の最新情報を伝え地域の絆を守っていこうという狙いだ。「故郷を忘れず、いつか帰ってきてほしい」と編集者たちは願う。
「月刊おがつ」は、自治会長や漁協、商工会などの有志でつくる「雄勝地区震災復興まちづくり協議会」が編集、発行した。8日に出した第1号は、A3判の両面に、がれき撤去をするボランティアの活躍ぶりや、地区でまとめた高台移転の復興案などを掲載。9月1日発行予定の第2号では「雄勝復興太鼓」の練習をする雄勝中学校の生徒や、復興を願って住民が設立した水産会社などを写真とともに紹介する。
雄勝はホタテやカキの養殖が盛んで、真っ青で深い入り江が印象的な町だ。しかし、津波で7割以上の世帯が家を失い、住民4300人のうち約2700人が地区外へ移り住んだ。地元に残った住民たちは「このままだと町が消える」と危機感を募らせていた。
協議会が住民にアンケートをしたところ、「少しでも雄勝の情報が欲しい」という声が多く寄せられた。当初はインターネットでの配信を考えたが、大半の住民がパソコンを失っていた。パソコンに不慣れな老人も多く、紙のかわら版を郵送で届けることにした。
転居先の三重県鈴鹿市で第1号を手にした千葉美恵子さん(56)は「雄勝がなつかしく、離れて申し訳ない。いつか故郷に戻りたい」。石巻市内に転居した秋山恵美子さん(70)は「若者が雄勝の復興のために頑張っている姿が目に浮かび、うれしくて何回も読み返しました」と語った。
編集長の石井肇さん(37)は「今後も町の再興に向けて頑張る人たちの姿を伝えたい」と話す。
第1号は1200部を発行。制作費や郵送費は寄付金などで賄った。協議会ではカンパを募っている。カンパは郵便振替(口座番号02260・6・118207、加入者名「雄勝地区震災復興まちづくり協議会」)へ。(小川智)