津波で町長が死亡し、半年近くトップ不在が続く岩手県大槌町の町長選が23日告示され、前町議長の岡本大作(62)、元町総務課長の碇川豊(60)、環境団体代表小川文一(64)の3氏が届け出た。出陣式や第一声では、復興の方針が示せず進まない現状を打破し、リーダーシップを発揮することを強調した。
候補者の一人はまず、犠牲者を弔うため、だれも住んでいない市街地に選挙カーを進めた。
町長ら職員40人が死亡・不明となった旧役場前では、机を置いただけの献花台に花束を供え、涙ぐみながら手を合わせた。それに先だって後援会事務所跡に行き、死亡した支援者に黙祷(もくとう)した。後ろには、町内最大の檀家(だん・か)を持つ江岸寺の墓地が広がる。
各陣営とも仮設住宅のある内陸部を中心に回った。最初は自粛していた名前の連呼を「あいさつ回り」と始める陣営もあった。
津波で家が流され、夫と仮設住宅暮らしの伊藤ミヨさん(75)は「復興の遅さに涙が出る。気分は選挙どころではないが、リーダーがいないと進まない。希望がわく主張をしてほしい」と語った。
同日告示された町議選は定数13に19人が立候補する激戦。いずれも28日投開票される。(東野真和)