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2011年8月23日8時30分
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出荷できるのか…不安抱え、福島で早場米収穫始まる

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【動画】福島県で早場米の収穫始まる/会津坂下町

写真:放射性物質の検査をする早場米「瑞穂黄金」が収穫された=22日午後1時57分、福島県会津坂下町五ノ併、金子淳撮影拡大放射性物質の検査をする早場米「瑞穂黄金」が収穫された=22日午後1時57分、福島県会津坂下町五ノ併、金子淳撮影

写真:早場米「瑞穂黄金」の収穫が始まった田んぼ。放射性物質の調査指定を示す立て札が掲げられている=22日午後1時すぎ、福島県会津坂下町五ノ併、岩本写す拡大早場米「瑞穂黄金」の収穫が始まった田んぼ。放射性物質の調査指定を示す立て札が掲げられている=22日午後1時すぎ、福島県会津坂下町五ノ併、岩本写す

写真:収穫されたばかりの早場米「瑞穂黄金」のもみ=22日午後2時4分、福島県会津坂下町五ノ併、金子淳撮影拡大収穫されたばかりの早場米「瑞穂黄金」のもみ=22日午後2時4分、福島県会津坂下町五ノ併、金子淳撮影

 東京電力福島第一原発の事故の影響が直撃した福島県で22日、早場米の収穫が始まった。この日に刈り取ったコメは県が放射性物質を検査し、月末にも出荷の可否が判明する。早場米でも国の基準値を超えると、水田がある地域全体ですべてのコメの出荷が制限される。農家は不安を抱え、検査結果を待っている。

 原発から100キロ以上離れた会津坂下(ばんげ)町の水田。この日午後、農業生産法人を経営する猪俣泰司さん(61)は、作業員が35アールの水田で早場米「瑞穂黄金(みずほこがね)」を収穫する様子を見守った。

 「いつもなら収穫が楽しみなのに、今年はそんな気持ちになれない。良い結果を早く知りたい」

 県が検査する早場米は21市町村の52.9ヘクタール分。その後、9月上旬から、主力のひとめぼれやコシヒカリなど一般米の検査が始まる。

 同県の早場米の作付面積は全体の約0.1%。県独自の判断で、出荷の申請があったすべての農場で検査する。ここで放射性セシウムが基準値(1キロあたり500ベクレル)を超えると、合併前の旧市町村単位で、この秋に収穫される一般米も販売できなくなる。

 県の担当者は「心苦しいが、早場米で放射性物質が検出されれば、同じ地域の一般米でも出ると考えられる」と説明する。早場米が基準値以下だった場合でも、一般米については国が定めた収穫前と収穫後の2段階で検査し、出荷の可否を判断する。

 これから収穫を迎える農家も不安を隠さない。同県の早場米の主品種「五百川」を生産する本宮市の後藤清太郎さん(59)は「早場米で検出されたらコシヒカリも出荷できないなんて、コシヒカリの人は納得しない」。

 検査方針が明らかになった8月以降、早場米「五百川」の主産地「JAみちのく安達」(二本松市)には、早場米の農家から不安の声が相次いだ。「コシヒカリに迷惑をかけたくない」「出荷をあきらめるから検査を取り下げられないか」――。高宮文作常務理事は「トップバッターとして早場米の結果に注目が集まり、農家の重圧になっている」と説明する。

 一般米の農家も気をもむ日々が続く。二本松市の佐藤助夫さん(55)は、本当にコメが作れるのかと思いながら今年の作付けに踏み切った。「風評に負けないようにするには食味を良くするしかない」と有機肥料を増やした。「検査はやった方がいい。『安全』のお墨付きをもらいたい」。放射性物質の影響を避けようと、「穂が地面につかないよう注意している」と話す農家もあるという。

 福島県の昨年のコメの収穫量は44万5700トンで新潟、北海道、秋田に次ぐ。今年の作付面積は、津波による塩害や警戒区域の設定などで昨年の約8万ヘクタールより2割ほど減少している。(岩本哲生、相原亮、佐藤美鈴)

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