東日本大震災で審理が中断していた殺人事件の裁判員裁判が22日、仙台地裁で再開され、新たに選任された裁判員に震災前の審理の録画が示された。新裁判員は証人尋問に直接参加せずに判決を決める異例の対応となり、弁護側は反対している。
中断していたのは犯行当時少年だった被告(32)が無職男性(当時31)を殺害したとされる事件の裁判。初公判の3月7日以降、証人尋問や被告人質問の一部まで進んでいたが、同11日の震災で審理が中断し、「裁判関係者の被災状況や交通事情などを考慮」するとして裁判員が全員解任されていた。
この日は新たな裁判員6人が選ばれ、審理を再開。改めて行われた罪状認否で被告が否認し、検察側も改めて冒頭陳述をした後、DVD映像による証拠調べが約2時間続いた。裁判員らの前にモニターが置かれ、震災前の審理で出廷した証人が発言する映像が流された。
録画の利用は、仙台地裁が「記録文書を法廷で読み上げるよりも分かりやすい」と検察側、弁護側に提案。弁護側は法廷のやりとりを重視し、証人尋問を新裁判員が直接するよう求めていたが、却下された。
審理終了後、検察側は「DVDを見ることで分かりやすく、現行の制度では適切な手法と考える」と評価し、弁護側は「映像だと裁判員が緊張感を持って聞くのが難しい」と話した。
録画の利用は26日まで毎日続く。29日に結審し、判決は来月1日に言い渡される予定だ。(古庄暢、木下こゆる)