東京電力福島第一原発事故で炉心溶融した核燃料の取り出しに向けて、文部科学省は核物質の種類や量を測定する技術開発に着手する。燃料取り出しは東電が10年後をめどとしているが、その際、国際原子力機関(IAEA)に核物質の量の報告が必要になる。原子力の平和利用を証明するためだ。
基本技術の開発は4年計画で、文科省と経済産業省が所管する独立行政法人、日本原子力研究開発機構が中心に進める。海外の研究機関の専門家にも助言や技術評価を求める。文科省は総額6億円の開発費を見込む。
福島第一原発1〜3号機では、多くの核燃料や燃料棒を覆う部材などが溶けて塊や粒子状になり、不均質に混ざり合っていると考えられている。
核不拡散条約に基づくIAEAとの協定では、こうした未知の燃料を取り出すには、含まれるプルトニウムやウランなどの核物質量を計算し、報告することが必要となる。
しかし、今回のような事態は前例がなく、その量や種類、状態などはよくつかめていない。1979年に起こった米国のスリーマイル島事故では、米国は核保有国のため報告義務はなかった。86年のチェルノブイリ事故では燃料を取り出すことなく炉を封鎖。原発の事故後に核物質量を測定する技術は世界的にも確立されていない。
このため、文科省は、溶けた炉心の燃料について、核物質ごとの密度や存在する比率を分析する技術などを応用して、総量計算が可能か調べる。燃料の一部に中性子をあてて、その反応の違いから、燃料を破壊せずに、様々な核物質の量を測定する手法などの開発をめざす。
炉内の燃料取り出しについて、東電内の資料では、10年後をめどとしている。国の原子力委員会専門部会は現在、溶けた燃料の取り出し準備など、廃炉へ向けた工程表を検討している。高線量のため、ロボットなどによる遠隔調査方法の開発も課題にあがる。今回の結果は、こうした廃炉に向けた技術開発にも生かせる。(佐藤久恵)