仙台市議選(定数55)が19日告示され、午前11時までに5選挙区に72人が立候補を届け出た。被災地で選挙自粛ムードが広がり、公費負担分を復興費に回すとして選挙カーを使わない候補者がいる一方、「今こそ政策を訴える時」と拡声機を使う候補者もいる。仮設住宅前での演説もあり、震災選挙が始まった。
「震災で多数の被害が出た。みなさんと街づくりを進めていきたい」。仙台市泉区の現職(49)は事務所前で第一声をあげた後、たすきをかけて自転車で地域を回り始めた。5回目の選挙だが、初めて選挙カーを使わないという。
沿岸部は津波の被害が広がり、内陸部も地滑りで住宅が傾くなど震災の爪痕が残る仙台市。有権者には「選挙どころではない」との声がある。
現職約20人は、選挙カー利用の自粛や公費から支出される燃料代の申請をしないことを申し合わせた。「少しでも公費を復興費に回すため」という。
これに対し、青葉区の新顔(40)は繁華街で「増税なき復興を目指す」と、拡声機で声を張り上げた。選挙カーからも支持を訴えるという。「震災後、政策に復興策を加えた。自粛より訴えることが大切」。新顔だけに「誰なのか分かってもらわないと」とも明かす。
宮城野区の現職(74)の陣営では、出陣式の前に支持者らが震災の犠牲者に黙祷(もくとう)を捧げた。津波で浸水した事務所の前には「復興へ希望を」と記した高さ約3メートルの看板を掲げた。
太白区の現職(43)は、同区で約200戸が並ぶ仮設住宅前の幹線道路に立った。「選挙をする以上、仙台の街をどう復興させていくか、一緒に議論していきたい。被災した皆さんの生活再建を一番の柱にしていく」と仮設住宅に向けて訴えた。(四登敬、中村靖三郎)