大震災から5カ月の11日、福島、宮城、岩手の10カ所の被災地で一斉に花火が打ち上げられる。「鎮魂の花火」のために全国から集まった寄付金は約6千万円。企画を立ち上げた高田佳岳さん(34)=東京都=は「被災地の人たちが自ら立ち上がった」と手応えを感じている。
イベントは「LIGHT UP NIPPON(ライト アップ ニッポン)」。震災直後、東京都内の花火大会が次々と中止されると知り、高田さんが「東京で上げられない分の花火を被災地で上げたい」と思い、立ち上げた。
震災1カ月後に被災地に入ったが、最初に訪れた被災地の観光課長は「みんな明日を生きるので精いっぱいだ」。被災地を歩き、一人ひとりに思いを伝えた。
横浜市出身の高田さんは東京水産大学を卒業後、東京大学大学院に進み、岩手県大槌町の同大学海洋研究センターで2年を過ごした。センターは津波にのまれ、第二の故郷である町は甚大な被害にあった。
震災後に再会した大槌町の人たちは「別人のよう」だった。「夏が楽しみだと思える日常を取り戻してあげたい」と思った。
「花火には、鎮魂の意味もある」。高田さんが、大槌町で出会った、ある男性の言葉だ。この思いが、被災者の心を動かしていった。実行委員長を引き受けた大槌町の自営業三浦秀次さん(46)は「とにかく11日を目指してまっしぐらになれた。町に笑顔や希望がないと復興にはならない」と力を込める。全国約100の企業や団体、個人からメッセージとともに寄付金が集まった。
各地の花火大会は、地元の人たちが実行委員となり、独自に祭り会場の設営が進められている。「東北の人は着火すれば熱い。花火を起爆剤に町が躍動を始めている」と高田さんは期待する。(斉藤寛子)