東京電力福島第一原発事故で、福島県内の公立の小中学校、養護学校、幼稚園・保育所の半数にあたる584校が、汚染された校庭や園庭の土を取り除く工事を実施したか、計画していることが朝日新聞の調査でわかった。このうち97%が夏休み中に終える見通しだ。除去で生じる土の量は約18万立方メートルにのぼるが、処理のめどは立っていない。
全59市町村に、公立の計1160校の実施状況を聞いた。土の除去を実施または計画中なのは25自治体の584校。このうち、10日までに完了したのが299校、おおむね今月末までの夏休み中に終えるめどが立っているのが268校。合わせると97.1%が2学期始業前に終える見通しだ。
土の除去を急ぐ自治体側には、子どもの県外転出を防ぎ、避難している子どもが2学期に戻るきっかけにしたいとの考えがある。
他方、実施するものの時期が具体化していないのは17校。「体育館の補修工事で校庭に重機がある」(棚倉町)といった事情を抱えている。
現時点で予定していないのは、放射線量が低い会津地方のほか、原発事故に伴う警戒区域内にある双葉町や楢葉町などの287校。いわき市などの289校が「検討中」とした。
工事を終えた学校では、校庭の線量が例えば毎時3マイクロシーベルトから0.2〜0.3マイクロシーベルトに低減するなど、すべての自治体が「効果があった」と回答した。土を除去しない学校でも、高圧洗浄機で校舎を洗ったり側溝の泥を取り除いたりしているという。
除去した土を処分できた学校はなく、ほとんどは校庭の一角に深さ1.5〜3メートルの穴を掘り、埋めたままになっている。土の量は、算出している19自治体分だけで計約17万8千立方メートル。東京ドームのグラウンド一面に約14メートルの高さまで積んだ量に相当する。
除去工事にかかる費用は校庭の広さなどで異なるが、多くの自治体で、1校あたり中学校で1千万円前後、小学校で500万円前後を計上している。
一方、県立高校では90校中23校が工事を実施または計画中。県が工事費を助成している私立の幼稚園・保育所なども含めると、工事費は少なくとも計約60億円にのぼる。
福島市には、県外に避難している子どもの親から、除染計画などの問い合わせが相次いでいる。同市の担当幹部は「苦渋の選択を迫られている家族に『戻って』とは言えないが、少なくとも学校の安全にめどはついたというメッセージを出したい」と話す。(東山正宜、後藤洋平、小寺陽一郎)