東日本大震災の復興財源をめぐり民主党が10日開いた検討チームの会合で、歳出削減や国有資産の売却などの政府の回答が示された。子ども手当の見直しや公務員人件費の削減、政府保有株の売却を柱に総額で3兆円超を捻出できる見通し。民主党は来週までに財源案をまとめる予定だ。
7月末に菅政権が決めた復興基本方針では、今後5年間の復興集中期間に19兆円の財源が必要と見込んでいる。過去2回の補正予算で6兆円を計上。残る13兆円は復興債を発行して、償還は臨時増税や歳出の削減などで賄うとしていた。
会合ではこれまで党側から提案があった財源について、政府がそれぞれ「実現可能性」と5年の集中期間で見込まれる金額を回答。今国会に提出している公務員人件費を1割前後削減するための特例法が成立すれば、少なくとも5800億円が確保できるという。
また、東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえたエネルギー特別会計の見直しで少なくとも500億円を確保できるとした。政府が保有する日本たばこ産業(JT)株やNTT株の売却もそれぞれ「検討」「慎重に検討」すると応じた。
それらに加え、民主、自民、公明の3党が9日に合意した子ども手当の減額で約2兆1千億円、高速道路無料化の凍結で約4800億円が捻出できる。復興にあてる財源の総額は3兆円を超えるのは確実だ。
一方、党側が強く要望していた、国債償還にあてるための「国債整理基金特別会計」の積立金の活用については、「将来の償還財源のため市場の信用を失う」と回答。日本銀行に直接国債を引き受けさせる案については、「他の主要国でも禁止」として、利用できないと説明した。
民主党が復興財源案をまとめた後、政府税制調査会や復興対策本部が、復興費用の残る10兆円規模について臨時増税で手当てするための制度設計を本格化させる。ただ、菅直人首相の辞任後に予定される民主党代表選では増税が争点になりそうで、次期首相次第で議論が白紙に戻る可能性もある。(湯地正裕)