東京電力は10日、爆発で屋根が吹き飛んだ福島第一原子力発電所1号機の原子炉建屋を覆うカバーの組み立てを始めた。放射性物質が漏れ出すのを抑えるのが目的だ。9月末の完成を目指す。
カバーは縦47メートル、横42メートル、高さ54メートル。長さ140メートルのアームを持つクレーンで、建屋南東からカバーを支える柱の組み立てを始めた。ポリエステル繊維に燃えにくい樹脂を塗ったパネルを鉄骨の骨組みにはめ込む構造。被曝(ひばく)を避けるため、クレーンを遠隔操作して組み立てる。日本建築をヒントにねじやボルトを使わない方式を採用した。
1号機周辺の放射線量は毎時1〜20ミリシーベルト。カバーには放射性物質を吸着するフィルター付き換気装置6台が取り付けられている。完成後は、毎時4万立方メートルの空気を浄化して入れ替えることになる。
台風などによる破損の心配もあるが、風速25メートルまで耐えられる設計だ。東電は「ここ35年に周りで観測された10分間平均の最大風速は17メートル」としている。風速が設計の前提を超えた時でも「足場がずれて原子炉建屋に寄りかかるので大きく崩れない」という。カバーには風で巻き上げられないよう重りをつけるという。
またカバーの中は熱がこもりやすい。外の気温が28.5度の場合、中は最高39度まで上がる予想で、クーラーの設置を準備している。
1号機同様に爆発で屋根が吹き飛んだ3、4号機は、燃料プールから燃料を取り出した後にカバーの工事に取りかかる。いずれも3年後をめどにコンクリート製の建屋で覆うという。(杉本崇)