北海道電力は9日、定期検査中のまま5カ月以上にわたって調整運転を続ける泊原発3号機(出力91.2万キロワット)について、最終検査を経済産業省原子力安全・保安院に申請した。保安院は同日に検査を開始、11日には原子力安全委員会に結果を報告する。検査が終了すれば営業運転に移る。営業運転を再開する原発は東日本大震災後で初となる。
泊3号機は1月に定検に入った。その後、再起動して3月7日に発電を再開し、調整運転に移行。通常なら1カ月程度で最終検査を受けるはずだったが、東京電力福島第一原発の事故で申請を先送りしてきた。
営業運転と変わらないフル出力の調整運転が長期にわたるのは異例で、保安院は「法令上問題がある可能性がある」と申請するよう指導してきた。ただ、停止中の原発を対象としたストレステスト(耐性評価)の1次評価の対象になるかどうかが注目されていた。
海江田万里経済産業相は9日、「泊3号機はすでに運転中の状態で、2次評価の対象」と北海道の高橋はるみ知事の質問に回答。北電も9日、「事業者の義務」と申請した。
菅政権は今回に限り、安全委が保安院の検査を再チェックすることにした。ただし定検で調整運転中の原発は泊3号機だけで、今回の動きは他原発の再起動には影響しないとみられる。
一方、再開の可否の判断を保留していた高橋知事は道の判断を待たず保安院が申請を求めたことについて「地元軽視だ」と政府を批判。泊3号機を営業運転中の原発と同列に扱う理由について、政府の統一見解を先月中旬から求め続けていたためだ。回答は9日午前に届いたが、すでに保安院が北電に最終検査を受けるよう指示しており、道の判断を示せなかったという。ただ、道は北電や国に再開をやめるよう要請はしないという。
海江田経産相は同日夜の会見で、電話で高橋知事に事情説明する意向を示した。