東日本大震災の津波になぎ倒された岩手県陸前高田市の景勝地「高田松原」の松でつくった薪をたく、お盆の迎え火が8日、同市矢作町であり、夜空を焦がした。被災者らの願いを記した薪は京都の伝統行事「五山送り火」の大文字で燃やされるはずだったが、放射能汚染を不安視する根拠のない声に押されて中止になった。
約50人の遺族らが迎え火を見守った。「お父さんは最高の父です。ありがとう」「前へ前へ行くぞ」「絆」――。燃された333本の薪の一本一本には、津波で亡くなった人への思いや、復興に向けての決意が記されていた。
母と姉を亡くし、「鎮魂」とフェルトペンで書いた斎藤哲夫さん(51)は「(京都に受け入れられず)やるせない」。祖父母を亡くした高校2年の及川亮さん(16)は「自分の思いが炎とともに届けられたかな」と目を潤ませた。
薪にメッセージを記すことを呼びかけた鈴木繁治さん(66)は、6日に受け入れられないことを伝えに来た大文字保存会の松原公太郎理事長(58)と共に見守った。鈴木さんは「京都で願い事を書き写した護摩木を燃やしてもらうことになり、ほっとした。京都市に抗議が殺到していると聞いて複雑な気持ちだ」と言葉少なに話した。(井上未雪)