コメが収穫期を迎えるのを前に、千葉県内有数の早場米の産地の多古町で4日、県が収穫前の玄米の放射性物質の検査に着手した。今夏の収穫は来週にも始まる見通し。国の検査方針は3日に示されたばかりだが、県は「消費者と生産者に早く安心してもらいたい」と独自に準備を進めていた。
検査はまず、高い数値の空間放射線量が測定された17市町で収穫1週間前の玄米を調べる。収穫後も含めると、53市町村の326地点が対象となる。国の基準値(1キログラムあたり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された市町村からの出荷は停止する。
4日は、県北東部の多古町で、県や町の職員が試料となるイネを採取。JA多古町の高木雅喜組合長は「生産者は安心安全の食を提供するのが使命。早く調査をすませて『安心』のお墨付きをもらいたい」。
多古町では町内の約1440ヘクタールの水田の多くで、早場米として知られる「ふさおとめ」が収穫を待つ。県香取農業事務所の池田清一所長は「消費者に安心して食べてもらうため、調査が信頼につながると確信している」。一方で、高木組合長は「もし悪い結果が出たら、国や東京電力はどうしてくれるのか。生産者はみな心配でならない」。
地元の生産者団体「やる気集団」会長の大木茂秀さん(61)も調査を見守った。「放射能は怖いけどお客さんが待っている。早く良い調査結果を聞いて、安心して出荷したい」
多古町のある米店ではほとんどのコメを、町内と周辺市町の農家から直接買い入れている。今年は、放射能への不安から、新米より古米を求める客が多いという。店主の男性は「年々コメの消費が減り、生産者の廃業も相次いでいる。米粉のパンが注目され、やっと消費が上向くかと期待していたのに」と話す。
県畜産課が成田、香取、いすみ、館山、富津、袖ケ浦の各市で7月に行った飼料用のイネの検査では、放射性物質が検出されなかった。店主は今回の検査にも期待を寄せるが、「こればっかりは、祈るしかないですね」。(小沢邦男、永井真紗子)