東日本大震災の影響が、東京など被災地以外の地域の企業にも及んでいる。地震や津波による直接の被害はなくとも、取引先の被災や消費者の買い控えといった影響が出て、数カ月を経て倒産に追い込まれるケースが増えている。
都内2カ所でカフェを開いていた「ベヌーゴジャパン」は、3月11日を境に客足がパタリと止まった。売り上げが落ち込み、店を閉じざるを得なくなった。
もとはイギリスで始まったサンドイッチ店。2008年までは六本木ヒルズにあった米証券大手リーマン・ブラザーズのオフィス内にカフェを開き、売り上げも安定していた。しかし、世界的な金融不安の引き金にもなった同社の破綻(はたん)に伴い、業績が悪化。そこに震災が追い打ちをかけた。
カフェの取引先に勤めていた男性(47)は、元社長に請われて昨年10月に社長に就き、債務整理に取り組んだ。震災が起きたのは、ようやく軌道に乗り始めた矢先のことだった。
オフィス街の一角にあった恵比寿のカフェの周辺は、自宅待機や外出の自粛などでほとんど人影がなくなった。1日の売り上げが数千円という日もあり、3月の売り上げは前年比で8〜9割の減に。
男性は「震災後の数カ月間を持ちこたえられれば何とかなったと思いますが……」。しかしその余裕はなく、6月上旬に破産した。
東北や北関東周辺のホテルや旅館から観光情報誌に広告を取り次いでいた都内の広告会社も、震災がきっかけで倒産に追い込まれた。
震災が起きたのは「東北」「福島」「日光・那須」を紹介する三つの観光情報誌の発売翌日だった。被災したり、風評被害で客が来なくなったりしたことで広告主の収入が途絶え、後払いで契約した約3千万円の広告料が回収できなくなった。資金繰りに行き詰まったのは5月下旬。
元社長(68)は「ネットの広がりでもともと観光情報誌は売れ行きが低迷していた。震災に背中を押された形です」と残念そうに振り返る。
4人の社員に何とか給料と退職金を支払い、それぞれ独立や再就職をしている。それでも元社長は「銀行や取引先、従業員、そして家族にも迷惑をかけた。もう少し頑張れなかったか」と悔やむ。
高級ジーンズを手がける衣料品メーカーも、5月上旬に民事再生法の適用を申請した。約100人の従業員については、解雇したり給与を減らしたりせずに済んでいるが、値下げによる在庫の整理などで慌ただしい日々が続く。
2年前に別の会社から事業を引き継ぎ、生産工場を海外に移すなどしてコスト削減をはかり、震災前は売り上げが順調だった。ところが、春夏物の稼ぎ時を前に震災が起こったことで、買い控えが発生。売り上げが前年比で3〜4割落ち、在庫を大量に抱えてしまった。
役員は「衣料品メーカーは在庫を抱えると致命的。震災でこんな影響を受けるとは思ってもいなかった」と語る。
東京都内の看板製作所も、6月に経営が破綻した。東京商工リサーチによると、今春のダイヤ改正などで見込んでいた電車の時刻表の受注が震災の影響で得られなかったことが引き金になったという。(斉藤純江)