東京電力の原発事故に伴う賠償の範囲を定める政府の原子力損害賠償紛争審査会は、汚染牛問題による風評被害について、汚染された稲わらの流通が確認された16道県の肉牛農家に、賠償を認める方向だ。5日に決める予定の中間指針に盛り込む。
風評被害による賠償を認めるのは、北海道、東北全県と茨城、栃木、群馬、埼玉、新潟、岐阜、静岡、三重、島根各県全域の肉牛農家ら。汚染の基準値を下回る稲わらが流通した千葉についても賠償を認めるかどうかを最終調整している。
政府は2日、基準値を超える放射性セシウムが牛の肉から検出された栃木県産牛の出荷停止を指示。出荷停止は福島、宮城、岩手を含めて4県になったが、審査会はすでに、出荷停止にともなう損害は賠償対象と認めている。
一方、汚染稲わらを食べた牛が確認された東北・北関東各県産では、主力の去勢牛「A―4」クラスの価格が東京市場で一時、3〜7割も下がった。これまでの指針では、風評被害は同じ県内で出荷停止を受けた畜産物があることが賠償認定の条件だったが、今回は出荷停止がかかっていなくても、風評被害を広く認める例外措置をとる。