まもなく収穫期を迎えるコメの放射性物質検査について、農林水産省は、収穫前と収穫後の2段階で実施する方針を固めた。収穫前に市町村ごとにコメの実を検査。高い値が出た地域については収穫後の検査の際に調査地点を増やす。国の基準値(1キロあたり500ベクレル)を超えた場合、政府としてその市町村のコメを出荷停止とする。
検査の実施主体となる自治体に統一的な手順を示すもので、近く通知する。鹿野道彦農水相は2日の閣議後の記者会見で「今週中に公表したい」と述べた。
収穫前の検査は予備検査と位置づけ、土壌の放射性セシウム濃度が1キロあたり1千ベクレルを超す地域▽空間放射線量が平常時より高い地域――を対象とする方向で検討している。空間放射線量については毎時0.1マイクロシーベルトを目安とする。
予備検査は収穫の1週間〜10日前に実施する。1キロ分を玄米の状態にしてセシウムの含有量を調査。基準は1キロあたり200ベクレル程度とすることを検討中で、その数値を超えた市町村には収穫後の本検査の検査地点を増やす。
本検査の結果が出るまで、農家には出荷しないよう求める。1キロあたり500ベクレルを超えた場合はその市町村のコメを出荷停止とする。解除の条件は設けず、出荷停止となった市町村では、今年の収穫分の出荷は認めない方針だ。
農水省は4月に土壌の値が1キロあたり5千ベクレルを超す場所でのコメの作付けを禁止しており、検査は収穫後に実施する予定だった。その後、お茶や稲わらの汚染をめぐって後手の対応が続き、汚染牛肉の市場流通を招いたため、収穫前から調べることにした。
食品の放射性物質検査は各自治体に任されている。だが、コメは日本の主食で年間を通して食べるため、国として検査方針を明確にした。農水省はすでに東北・関東地方の都県と新潟県などに検査方針を伝え、各都県は検査態勢の検討を始めている。千葉県では近く早場米の収穫が始まるため準備を急いでいる。(井上恵一朗)