経済産業省は1日、東日本大震災から3カ月後の産業実態を調べた結果を公表した。国内の部品供給網が復旧しても、震災で調達先を変えた製造業のうち42%が海外からの素材や部品の調達を続けると答えた。万一に備えて調達先を分散した企業の行動が海外への依存度を高め、国内経済の縮小を招いている形だ。
この日の拡大経済産業局長会議で報告された。全国の123社(製造業65社、小売り・サービス業58社)を対象に6月14日〜7月1日に調査した。
海外からの調達を続ける理由には、調査時に1ドル=80円近辺で推移していた円高により、調達コストが割安になるとの理由もあるようだ。円高が一時的な調達先の変更を長期化させている。
一方、被災地の生産の回復は順調との結果が出た。被災した製造業の生産拠点のうち93%が復旧を済ませ、80%が震災前の生産水準と同じか、それを上回る状況に回復。震災前を下回ると答えた拠点も、76%が2011年中に震災前の水準に回復するとした。
拡大経産局長会議では、震災の影響に加え、対ドルで戦後最高値をうかがう円高や電力供給の制約が空洞化を加速させると懸念も相次いだ。電力使用制限令の対象の関東の化学メーカーには、中国から「専用送電線で安定した電力を供給する」と工場進出の誘致があったほか、タイやシンガポールなどからも誘いがあるという。経産省は11年度予算の第3次補正と来年度当初予算で、企業の海外移転を防ぐ補助金の拡大を検討する。(福田直之)