九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開を巡る国のテレビ番組への「やらせメール」問題で、古川康・佐賀県知事が番組放送前に九電の副社長(当時)らと会談し「経済界にある再開容認の声も出すべきだ」と促した際、「声の出し方としてメールやネットという方法もある」と伝えていたことが分かった。知事が1日、取材に対して認めた。
古川知事は「(自分の発言が、やらせメールの)引き金になったかどうかは、九電の受け止め方がどうだったかなので、私は言及できない」と釈明した。
だが、番組放送5日前の6月21日に知事と会談した九電幹部の一人は「知事発言が発端になったとは思わないが、全く影響がなかったとも言えない」。少なくとも知事発言が、やらせメールを誘発した結果責任は免れないと見られる。
7月30日の記者会見で古川知事は「やらせメールを依頼したことは全くない」「九電として何かやってほしいという意味ではなかった」と釈明。九電幹部との会談でメールやネットという意見の出し方まで伝えたことには触れなかった。
同月8日、九電の松尾新吾会長から「賛成メールを送るよう要請したのか」との問い合わせがあり「要請した事実はない」と回答していたことも明かした。
やらせメール問題を調査している九電の第三者委員会の郷原信郎委員長は、30日の記者会見で、九電幹部が作っていた古川知事との会談メモには、知事の発言として「インターネットを通じて、賛成意見も集まるようにしてほしい」と記されていたことを公表。「知事の発言は結果的に、やらせメールの引き金になった」と指摘した。一方でメモ内容と知事の説明とに食い違いがあるため、事実確認を進めるとしていた。
古川知事と九電幹部3人の会談は6月21日朝。3人は佐賀市内で昼食を取りながら協議し、番組への賛成投稿を増やす必要があるとの認識で一致。その一人が知事との会談内容を記したメモは社内で、番組への賛成意見投稿を要請したメールに添付する形で社員約100人に配信された。また、その幹部から対応を指示された佐賀支社の3部長が、賛成メールを投稿するよう支社の取引先26社に働きかけることを決めた。