津波の被害を受けた福島県相馬市の施設で、大相撲玉ノ井部屋の夏合宿が始まり、1日、最初の朝稽古があった。土俵は泥をかぶったが、地元の人たちの手で復旧。恒例行事の開催にこぎ着けた。
先代玉ノ井親方(元関脇栃東)の志賀駿男さん(66)の郷里という縁で、相馬市で約20年前から夏合宿が行われてきた。期間中、周辺に立つのぼり旗は地元の夏の風物詩でもある。2004年、市が管理する松川浦スポーツセンターに支援者の寄付金などで道場が作られ、ここが会場になった。港のすぐ脇にあり、津波に襲われ、建物は残ったが、シャッターを破って入った泥が土俵を覆った。
今夏の合宿は開催が危ぶまれる中、先代の息子の玉ノ井親方(元大関栃東)が「できるなら、お邪魔させてほしい」と市に申し出た。地元支援者やボランティアの人たちが6月から復旧作業にあたり、7月には部屋の力士も手伝った。土俵の土を入れ替え、失った冷蔵庫や洗濯機などは地元の人が用意した。
この日の朝稽古を約20人の住民が見守った。地元後援会の会員、酒井一郎さん(76)は「今年は無理だと思っていたのに、よく戻ってきてくれた」と目を細めた。志賀さんは「地元の協力がありがたい。復興のために少しでも活気づけたい」と話した。
玉ノ井部屋には、原発事故で避難区域になっている福島県富岡町や浪江町の出身の力士もいる。8月23日までの合宿の間、ちゃんこを振る舞ったり盆踊りに参加したりして、被災地の住民と交流する。(木原貴之)