2011年7月22日18時55分
福島県などで開かれる全国高校総合文化祭(ふくしま総文)に招かれた海外の高校が相次いで来日を中止するなかで、韓国の高校だけが日本を訪れることを決めた。余震や原発事故の影響を心配する声に配慮して福島入りは見送るが、来年の開催地・富山県で日本の生徒と交流する。韓国の生徒は「日本は一番近い国。元気づけたい」と話す。
ふくしま総文には、米中韓やブラジルの生徒ら約80人が、国際交流のため参加する予定だった。米ハワイ州の生徒がフラダンス、中国・上海の生徒が合唱、ブラジル・サンパウロ近郊のグアルーリョス市の生徒がサンバを披露するはずだったが、米中とブラジルの高校は、放射能の影響が心配だとして来日を中止した。
富山県の招待で、生徒ら19人が同県滞在後に福島入りする予定だった韓国・ソウルの弦剛(ヒョンガン)女子情報高校でも、保護者から訪日をやめるべきだという意見が出た。
だが、高校側は「2005年から続く総文祭での日本との交流を途切れさせたくない」と訴え、富山を訪れることで折り合った。「一番近い国どうし、若い世代がますます交流を深めていってほしい」と引率教師の趙寅煥(チョ・インファン)さんは言う。
一行は29日に富山入りし、ふくしま総文に向けて練習してきた韓国の伝統舞踊「カンガンスルレ」を富山市内での交流コンサートで披露する。舞踊部の盧喜秀(ノ・ヒス)さん(3年)は、来日の不安よりも期待が大きい様子。チマ・チョゴリ姿で輪になって歌い踊るカンガンスルレのクライマックスは、踊り手みんなが手をつないで一つになる。「日本の高校生とも文化交流を通して一つになりたい」
富山県側の生徒による実行委員会で、国際交流を担当する福岡高校2年、藤巻彩香さんは「来てくれることに感謝の気持ちを伝えたい」と話す。被災地に向けた「激励のビデオメッセージ」を作り、韓国の生徒たちにも出演してもらうことを考えているという。
ふくしま総文は8月3日から7日まで、福島県で開かれる。郷土芸能部門は7月27〜29日に盛岡市で、演劇部門は8月5〜7日に香川県で開かれる。(雨宮徹、成川彩)