2011年7月17日3時47分
九州電力川内(せんだい)原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の増設を巡って国が2010年に開いた住民説明会で、九電が社員らに参加を求めていたことがわかった。九電は動員があったことを認め、29日までに国に報告する方針だ。
九電関係者によると、川内原発3号機の増設に向けて国は10年5月、住民から意見を聞く「第1次公開ヒアリング」を薩摩川内市で開いた。原子炉の新増設に必要な手続きの一つで、事前に選ばれた約920人が参加した。動員によって、一般の参加希望者が漏れた可能性もある。
九電は、原発周辺の社員や関係会社の社員らに説明会の日程を電子メールや口頭で知らせ、参加を要請していた。九電幹部は「反対派ばかりにならないよう、会場を埋めるのが目的だった」と話している。説明会では20人が意見を述べた。半数近くが賛成で、明確な反対は5人だけ。こうした意見などを参考に、同市長は九電に増設同意を伝えた。
意見を述べる人は公募して国が選んだ。九電は、応募して選ばれたら賛成意見を述べるよう指示した事実がなかったか調査中だが、「いまのところ確認されていない」としている。
今月8日に玄海原発(佐賀県玄海町)の運転再開をテーマに佐賀県が開いた説明会でも、九電が社員や関係会社員らを動員。直前の「やらせメール問題」発覚で動員は中止したというが、実際には63人が参加し、出席者の約2割を九電関係者が占めた。05年に佐賀県で開かれた、プルサーマル導入を巡る説明会でも、九電が関係者を動員したことが分かっている。
九電はメール問題で組織的な世論操作をしていただけでなく、中立・公正が求められる国の説明会に原発賛成派を送り込むことも常態化していたようだ。
メール問題を受けて国は九電など電力7社に、過去5年に国が開いた説明会に(1)影響力がある社員や関連企業への情報提供、要請(2)第三者の立場を装って特定の意見を表明することがなかったかを調べるよう求めている。(大畑滋生、佐藤幸徳)