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九電社長、月内にも辞任表明 経産相の批判受け

2011年7月16日3時6分

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 九州電力の「やらせメール」問題で、真部利応(まなべ・としお)社長が近く辞任することがわかった。月内に発表する。真部社長は再発防止や信頼回復にめどがつくまでは社長にとどまる考えだったが、海江田万里経済産業相が15日の記者会見で「早期に辞任するべきだ」との考えを示していた。

 海江田氏はメール問題について「組織的関与が非常に濃厚」「この種のやらせは何度も問題になってきたが改まらない」など厳しく批判した。また「(やらせが)明らかになれば、責任を取るのは当たり前」と話した。

 「自分がいなくなると次の世代が心配だと言うが、そんなことはない。代われば次の立派な人が出てくる」と、経営責任を明確にするよう求めていた。

 これを受けて真部社長は「自身の処分を最も厳しくしたいと考えている」とのコメントを発表した。

 九電の松尾新吾会長は16日未明、記者団に「海江田氏の発言を重く受け止め、それを念頭に対応する」と述べ、真部社長の早期辞任を認めた。時期については取締役会がある27日が「ひとつのめど」とし、今月末で辞める見通しだ。

 九電は14日にメール問題の調査報告書を公表。玄海原子力発電所(佐賀県)の運転再開に理解を求める国主催のテレビ番組に、賛成意見を寄せるよう社員らに指示していたのは、前副社長や佐賀支社長ら上層部がかかわった組織的なものだったと認めた。

 真部社長は問題発覚後に辞任の意向を固めていたが、14日の記者会見では「目の前の課題を放り投げることはできない」と発言。再発防止策のめどが付くまで続投したいとの意向を示していたが、海江田氏の発言で辞任時期を前倒しすることになった。

 これまで松尾会長は「今すぐ辞めることにはマイナスもある」などとして、真部氏の続投を求めていた。真部氏の早期辞任で、松尾氏の責任問題も浮上しそうだ。

    ◇

 九州電力は会社ぐるみで「やらせメール」にかかわっていた。同社は15日、2人の副社長を原発立地県の佐賀、鹿児島にそれぞれ送り込み、社内調査結果を伝えて謝罪した。本社から全国の9支社54営業所には、管内の自治体首長らに謝罪して回るよう指示した。

 玄海原発のある佐賀県玄海町には山元春義副社長(原子力発電本部長)が訪問。岸本英雄町長にメール問題の調査結果を伝え、「玄海町のみなさんの信頼を一からやり直すつもりで取り組む。申し訳ありませんでした」と頭を下げた。岸本町長は「きちんと信頼回復に努力を続けていただきたい」と応じた。

 川内原発のある鹿児島県薩摩川内市には貫正義副社長が訪れ、岩切秀雄市長に陳謝。岩切市長は会談後、「道義的に許し難い」と述べ、九電が定期検査中の川内1号機の運転再開延期を決めたことを「当然だ。私としてもストップをかけたと思う」と語った。

 貫副社長は鹿児島県庁で丹下甲一副知事、県議会で池畑憲一副議長に謝罪。「やらせメール」は、県議会特別委員会で九電執行役員がいったん否定した上で後日認めたが、組織ぐるみの関与は否定し続けた。社内調査で組織性を認めながら、問題発覚後の県議会でも否定し続けた執行役員の答弁を貫副社長は「(執行役員の)あの時、言った言葉は真実」と釈明した。

 当時、質問に立ち、虚偽答弁を受けた松崎真琴議員(共産)は「九電を信頼できるかどうか確認するため、もう一度、委員会で説明を聞きたい」と話した。

 九電によると、福岡県や糸島市にも幹部が出向き、謝罪と説明をしたという。

    ◇

 九州電力の「やらせメール」問題で、玄海原発(佐賀県玄海町)の安全性をPRする国のテレビ番組に協力するよう指示した中心人物の段上守・前副社長が取材に応じた。番組を周知するよう指示したことは認めたが、原発の運転再開に賛成する意見投稿を増やすことは指示していないとし、やらせメールは想定していなかったと主張した。

 九電の調査報告書は、段上氏ら3人が「原発再開への賛成意見の投稿を増やすことが必要」との認識を共有していたと明記。賛成投稿を増やすため番組の周知を指示した点も認めた。

 しかし、段上氏は取材で「賛成投稿が少ないと困るという思いはなかったか」との質問に「そういう発想はなかった」と述べており、社内報告書と一部矛盾している。

 段上氏は番組周知の指示を認め「(番組を)活性化したい、成功裏に終わらせたいという気持ちがあった」「活性化するには多数の参加が大事なため(広く)知らせてほしい、となった」などと説明した。

 一方で賛成メールの投稿指示は否定。「(番組を)知らせるのは大事だと思ったが、ああいう形はコンプライアンス(法令順守)上問題になる」「そこまで踏み込んだことは考えていなかった」と述べ、やらせは想定外との認識を示した。

 自身の責任は「本来なら(やらせメールを指示した課長級職員らに)やりすぎだと指導もできた」とした上で「私が原子力の責任者だったので管理責任はある。非常に申し訳なく、反省している」。6月末に副社長を退任し、子会社の大分共同火力(大分市)の社長に就任した。自身の進退については「九電の措置にお任せしたい」と話した。(原篤司、武田耕太)

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