2011年7月10日20時0分
九州電力玄海原発2、3号機の運転再開を巡る九電の「やらせメール」問題で、舞台となった佐賀県民向け説明番組の直前に、県側が県議から「やらせ」の指摘を受けたのに対処せず、放置していたことが分かった。県の求めに応じて番組を主催した国に報告せず、九電にも確認していない。県側は「県議の指摘は具体的な情報ではなかった」と説明している。
武藤明美県議(共産)によると、番組放送前日の6月25日夜、九電側が関係会社の社員に対し、原発の運転再開に賛成するメールを番組に送るよう指示した文書を入手。番組開始の約1時間前の26日朝、県庁内で、原子力行政を所管する県くらし環境本部の担当者に「(九電側から)指示が出ている。入札の談合のようなものだ」と訴え、番組の中止を求めたという。
取材に対し県は「担当者は実際の文書を見ておらず、県議から具体的な対応の指示はなかった、と話している」と説明。番組開始10分前に担当者から報告を受けたという古谷宏本部長は「県議の話は具体的な情報ではなく、国に伝えようもなかった」と話した。
番組は、国の担当者が「県民代表」7人に原発の安全性を説明する形で、地元ケーブルテレビやインターネットで生中継された。国によると、メール473件、ファクス116件の意見が寄せられ、いずれも、運転再開への賛成意見が反対意見を上回った。番組を視聴した古川康知事は「いいやり取りが出来たのではないか」と話していた。
県の対応について上脇博之・神戸学院大法科大学院教授(憲法学)は「やらせメールで公正さを欠いた可能性もあり、番組終了後でもいいから県自身で調べるべきだ」と話している。