2011年7月6日0時44分
被災地の知事への問題発言で辞任した松本龍復興担当相の後任に岩手選出の平野達男副大臣が就任した。被災地選出の平野氏の就任に歓迎する声が広がる一方、政治の混乱に改めて失望する声も出た。
「被災地の実情を熟知しているから、被災地に寄り添って頂ける」。盛岡市の谷藤裕明市長は早速、歓迎のコメントを出した。「九州の人間だから、何市がどこの県とか分からん」――こう冗談めかした松本氏と違って、岩手県選出で震災発生直後から被災者支援に当たってきた平野氏に期待する声は多い。
津波で自宅兼店舗を流された釜石市大町の元レンタルDVD店経営富田正さん(57)は「被災者の気持ちが分かるだろうから、期待は大きい」と話す。
ただ、復興の遅れを懸念する声も少なくない。
達増拓也知事は松本氏の辞任を受けて、「復興担当相の空白状態はあってはならない。被災地、被災者に対する裏切りだ」と記者団に語った。平野氏が後任に就いたことに歓迎の言葉はなく、「首相がまず行うべきは首相自身の責任を明確にすることだ」とし、退陣を要求した。
松本氏の発言を受け、県に寄せられた抗議や批判の電話やメールは約80件に達した。松本氏が「弟みたい」と呼んだ宮古市の山本正徳市長は「残念。やっぱり言葉をきちんとしないとダメなんだろう」、大船渡市の戸田公明市長も「言葉に配慮が足りない部分はあったが、親しみを感じていたので大変残念」などと話した。
政治の混乱に失望感を深める人もいる。自宅を流されて釜石市内の避難所にいる岩間正さん(69)は「被災者もみんなそれなりの知恵を出し合って避難生活をやり繰りしている。ただ、辞めても復興が速まるとは思えないのがつらいね」。大船渡市で避難所生活を続けている千葉俊雄さん(62)はこう求めた。「政治家は被災者のことなんて『ひとごと』なのでは。新しい担当相には復興に向けた道筋をスピード感をもって決めてもらいたい」