2011年7月4日18時23分
東日本大震災で被災した宮城県女川町で、NPOや保護者、町教育委員会など地域が一体となって運営する「夜間学校」が4日夕、始まる。地元の塾講師を雇って学習指導を行うだけでなく、保護者や住民らによる指導やキャリア教育なども検討。「地域全体で子どもを育てる場にしたい」と主催のNPOは話している。
「女川向学館(こうがくかん)」と名付けられたこの「学校」は、避難所となっている町立小学校を使う。地元の小中高校生を対象に週7日、夜に1日3コマを設け、数・英など5科目を教える。震災で働く場を失った地元の塾講師を雇う。
保護者や地域住民たちにも、読み聞かせや自習の監督などの形で運営に参加してもらう予定。キャリア教育の授業の講師として仕事や人生観を語ってもらうことも考えているという。
運営費は企業などの寄付で賄い、受講料は少なくとも3カ月程度は無料。6月末までに子どもたち177人から応募があった。
震災で、女川町では11あった学習塾が1に激減。力を入れてきたキャリア教育も停止していた。
そんな中、高校生向けのキャリア教育を手がけてきたNPO「カタリバ」(東京)の今村久美代表理事(31)が、この夜間学校を提案した。放課後の学習の場がない子どもたちと職場を失った塾講師の両方を支援し、学習とキャリア教育も両立する発想。町教委も小学校の提供を決めた。
開校を前に3日に同町を訪れ、保護者らと教育について語り合った鈴木寛・文部科学副大臣は「新しい教育や公共、街づくりのモデルと言える」と期待を示した。今村さんは「教育を人任せにせず、みんなでかかわる場にしたい。いずれは地域だけで運営する形を目指したい」と話している。(川見能人)