2011年7月1日20時12分
東京電力は1日、福島第一原子力発電所の岸壁沿いに完成させた全長362メートルの仮設防潮堤の写真を公開した。ふたたび津波に見舞われた場合、事故や復旧作業の停止につながる恐れがある。地震から3カ月以上過ぎてようやく応急対策を終えることができたが、抜本対策はこれからだ。
防潮堤は6月30日に完成した。福島第一原発の南東にある集中廃棄物処理施設や3、4号機の辺りに造られた。こうした施設の前には防潮堤がなく、津波の対策が十分でなかった。金網製のかごや防水シートに包んだ石を高さ2.4〜4.2メートルまで並べた。海面からの高さは最大14メートル程度。
東電が想定しているのはマグニチュード(M)8級の地震による高さ8メートルの津波。押し寄せる際の勢いで、この高さまで駆け上がることを前提に防潮堤を造ったという。ただし、将来的には、より強固なコンクリート製の防潮堤にする必要があるという。
ふたたび津波に襲われれば、原子炉や燃料プールを冷やすシステムが壊れたり、電源が失われたりして、重大な事故につながる危険性を抱えている。また、集中廃棄物処理施設などには、高濃度の放射能汚染水が7万トン以上たまっており、津波で施設が壊れて汚染水が流出する可能性もある。
東電は4月時点で、仮設防潮堤の完成は6月中旬の予定としていたが、5月の工程表の改訂時に6月末に延期した。作業に時間がかかったことについて、東電は「早く完成するべく努力していたが、作業環境が厳しかった」としている。(杉本崇)