2011年6月28日13時22分
東京、中部、九州、北陸の電力4社とJパワーの株主総会が28日にあり、東電福島第一原発の事故を受けて、株主から原発の安全性を不安視する意見や経営責任を問う声が相次いだ。東京、中部、九州の総会では、脱原発を訴える株主提案が出され、原発のあり方を問い直す場となった。
東電の株主総会は東京都内のホテルであり、午後1時時点の出席者数は9258人に上った。過去最多だった昨年の3342人を大きく上回る。
東電は例年より約1600多い約5600席を会場に用意した。総会の始まる午前10時に来場者は3917人だったが、開始後も増え続けて立ち見が出るほどになった。株主は経営陣のいる会場に入りきらず、別室でモニター視聴する第2〜5会場まで設けられた。
総会の冒頭で、議長を務める勝俣恒久会長が「原発事故と供給力不足による計画停電で、社会の皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけし、深くおわび申し上げます」と謝罪。続いて、1兆2473億円の過去最高の純損失を記録し、株主への期末配当がゼロになった2011年3月期決算が報告された。
開始から約20分後には、株主から原発事故の経営責任を問い、勝俣会長の議長不信任を求める動議(提案)が出された。動議は反対多数で否決。勝俣会長は経営責任について「今後の課題に着実に取り組む」「民間企業として電気事業の立て直しを図る」などと理解を求めた。
株主からの質疑が始まると、原発事故の責任や原子力の安全性を問う声が続いた。株主は「今回の事故は異常な天災によるものではなく、人災だ」「かつて総会で第一原発の廃炉を提案したが、否決された。どう責任を取るのか」などと声をあげた。
総会に約20年間出席し、脱原発を訴えてきたという男性株主は「(経営陣に)提案を聞いてもらえずにこうした結果となり、(ほかの株主に)申し訳ない。ただ、経営陣には責任を感じていない人が並んでいる」と批判。勝俣会長は「(経営陣は)全く新しい人で、という考え方もあるが、辞めることでなく、会社をしっかり更生させることで責任をとりたい」と答えた。
企業年金の減額、取締役の報酬返上、損害賠償の仮払い、放射性物質の拡散、発電所内の汚染水処理、津波対策の不備など、株主からの提案や質問は、東電を取り巻く様々な問題に及んだ。ただ、経営陣の答弁に納得しない株主も多く、発言を求める株主の声がやまなかった。
総会では、新社長に就任予定の西沢俊夫常務ら取締役17人の選任など、3件の議案が審議される。うち1件は株主402人による原発からの撤退を求める株主提案。「古い原発から順に停止・廃炉とし、新増設をしない」などと経営陣に求めている。ただ、定款変更を求める提案のため、可決には出席株主の議決権の3分の2の賛成が必要で、否決される可能性が高い。
東電の総会では毎年、株主から脱原発を求める提案や質問が出ている。総会の時間は昨年が3時間1分で、過去最長は1999年の3時間42分。
電力会社の株主総会は、28、29の両日に集中している。脱原発を訴える株主提案は29日の東北、関西、中国の3社でも議案にあがっている。