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被災地いわき、噴き出る温泉 活用難しく「沈下心配」

2011年6月13日17時17分

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写真:もうもうと湯気を上げて温泉が噴き出る旧炭鉱の排気口跡=1日、いわき市泉地区、佐々木写す拡大もうもうと湯気を上げて温泉が噴き出る旧炭鉱の排気口跡=1日、いわき市泉地区、佐々木写す

 福島県いわき市の住宅地2カ所で、温泉が湧き出している。いずれも国内最大級だった炭鉱地帯にあたり、東日本大震災の余震とされる震度6弱の地震があった4月11日夕から出始めた。専門家によると、近くの断層の隆起が原因とみられる。いつ止まるかわからず、住民は迷惑顔だ。

 同市内郷地区の5世帯が暮らす2階建てアパート。床下から湧き出した湯は約27度で、毎分約180リットル。当初は建物と塀の間に段差ができて湯がたまり、塀に沿って水路が走ったようになった。連絡を受けた市は段差部分に砂利を敷き詰めたため、今は地面の下を通って雨水用の配管から側溝に流れ込む。

 「最初は水道管が破裂したのかと思った。でも水道メーターは回っていないし、ぬるくてイオウ臭いので温泉だとわかった」と1階に住む大家の女性。「いずれ止まるというけれど、その後に地盤沈下するのではないか」と不安を感じている。

 南へ約10キロ離れた同市泉地区の戸建て住宅街。空き地に残る炭鉱の竪坑の排気口跡から、60度近い湯が毎分約5トン、もうもうと湯気を出して噴き出している。

 管理する常磐興産によると、1970年代に閉山の際、直径約10メートル、高さ3.7メートルの円筒形コンクリートで排気口にふたをするようにふさいだが、湯は上部のすき間からあふれる。住宅街に流れ出すのを防ぐため、同社が直径20〜40センチの導水管2本を設置し、すぐ脇の川に流している。

 観光利用はできないのか。「いつ止まるかわからないため、温泉施設を造るわけにもいかない。早く収まるのを願うだけだ」と見回りに来た社員。辺りには特有の強いイオウ臭が漂い、のどの痛みを訴える住民もいるほどだ。

 4月末から調査に乗り出した産業技術総合研究所(茨城県つくば市)地質情報研究部門の風早康平・深部流体研究グループ長は、地震で断層が隆起し、圧力がかかった地下水が地表に押し出されて温泉が湧いた、と分析する。「水が出ることで地下の圧力が徐々に解消され、次第に収まるはず。しかし長引く場合もあり、予測が難しい」として、しばらく調査を続けるつもりだ。

 両地区は茨城県側まで広がる国内最大級だった旧常磐炭鉱の一角で、地下300〜600メートルに坑道があった。同炭鉱に温泉はつきもので、石炭1トン掘ると温泉が40トン湧き出たという。

 地震の思わぬ副産物に行政も困惑している。いわき市環境企画課の担当者は「地震が原因とはいえ、温泉の自噴は自然現象であり『鉱害』ではない。このまま収まるのを待つしかない」と静観の構えだ。(佐々木和彦)

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