2011年6月12日20時43分
岩手県久慈市の小袖海岸で、ウニの素潜り漁の実演が人気だった「北限の海女」の存続が揺れている。東日本大震災の津波でウニは激減し、漁の拠点施設は跡形もなく流された。「素潜り漁を早期に復活させ、復興のシンボルに」「ウニの繁殖が先決だ」。関係者の思いは揺れる。
ウニの素潜り漁のシーズンは7〜9月で、かすりの着物に白い足袋姿の海女23人が観光用に実演していた。一時加入していた新人海女が人気を集めるなどして、観光客は2007年の3474人から昨年は8882人に急増。市は昨年、海女の道具や衣装を展示する小袖海女センターを約2700万円かけて全面改装したばかりだった。
ところが、津波に襲われたセンターは土台だけが残り、資料は流失した。海女が所属する市漁協小袖漁業生産部が海中を調べたところ、ウニは大半が死滅。実演場所には消波ブロックが崩れていた。
市は素潜り漁を復興のシンボルにしたいと、近くクレーンとダイバーでがれきを撤去する。市の下舘満吉産業振興部長は「規模縮小や、貝類を取るなどして期間中の実演開催にこぎ着けてもらいたい」と話す。
一方、漁協の村塚繁好生産部長は「ウニをしっかり繁殖させ、漁の復興を優先させるべきだ」と慎重な構えだ。海女の女性(58)は「津波は怖くないけど、取るウニがいない。当分潜れないと思う」。海女らは6月下旬、会合を開いて考えをまとめる。(塩原賢、渡辺周)