2011年6月10日5時34分
菅政権は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の損害賠償を支援する「原子力損害賠償支援機構法案」をまとめた。朝日新聞が9日入手した法案によると、東電への援助額や電力各社の負担額は、新設する「原子力損害賠償支援機構」内に設ける中立的な運営委員会が決める。政権は14日にも閣議決定する方針だ。
法案によると、機構は今回の原発事故の賠償に限らず、将来の事故にも備える保険的な組織。このため、原発を持つ電力各社には、機構に負担金を積み立てることを義務づけた。
運営委は、電力や金融、法律の専門家で構成。今回の事故のように賠償額が多額で、政府の支援が必要な場合、電力会社は運営委の議決をへたうえで、「特別事業計画」を経済産業相に提出する。計画には、合理化策や経営責任、利害関係者の協力内容を盛り込む。
経産相は電力会社の資産を厳正に評価し、経費も徹底して見直したうえで、閣議決定をへて事業計画を認定。公的資金を投入する。
賠償の枠組みは関係閣僚で5月13日に決定した。しかし、法案化のめどが立たず、政府の支援が不透明になるなか、東電株は9日の東京株式市場で、上場来の最安値を2日連続で更新。一方、東電は原発事故の対応や発電設備の復旧、火力燃料費の増大で手持ちの資金が減少。28日には株主総会もあることから、政権は閣議決定を急いでいる。
一方、政局が混迷するなか、14日に閣議決定できるかは微妙な情勢。法案提出の時期も流動的で、民主、自民両党には国が被害者に仮払いする法案を議員立法でめざす動きもある。