2011年6月8日17時30分
被災地のアマチュア無線愛好家たちが、三陸沿岸のほぼ全域から世界中と交信できる無線ネットワークを自前で構築した。インターネットと組み合わせることで、出力の小さい携帯型の無線機でも、遠方の人と交信できる。愛好家らは「災害時の通信モデルになればいい」と期待する。
今回の震災では広い範囲で電話などの通信網が断絶された。山と入り江が続くリアス式海岸の三陸沿岸では携帯型の無線機による交信も難しく、被害や救助要請がなかなか被災地の外に届かなかった。
その教訓からネットワークの構築に取り組んだのは岩手県一関市の医師岡崎宣夫さん(61)ら約10人。4月から、釜石市、大船渡市、山田町など沿岸を中心にした同県内5カ所で中継局(アンテナと無線機)を増設・整備。近くの住宅に置いたパソコンを経由してネットにつないだ。
災害時の停電に備え、中継局などには非常用電源も置いた。必要な機材は自ら購入したほか、全国の愛好家や無線機メーカーから提供された。
今回カバーできたエリアは同県北部の久慈市から福島県北部まで。送信した音声は、ネットを経由した後、遠方の中継局から再び無線として発信されるため、三陸沿岸から首都圏や海外にも直接、救助を求めることが可能になった。
愛好家らは災害時に役立てるには日ごろの訓練が重要だと、5月中旬から毎週2回、決まった周波数で情報交換をしている。
6月4日夜は、関東地方の愛好家を含む22人が参加した。岩手県陸前高田市の仮設住宅から交信してきた男性には避難生活の現状を聞いた。
構築メンバーの一人である野田尚紀さん(42)は「米国ではアマチュア無線の災害時の役目を法的に明確化している。日本でも位置づけるべきだ」と話している。(東野真和)