2011年6月8日15時0分
東日本大震災からの復興への思いを重ね、仙台七夕まつりの準備が急ピッチで進んでいる。伝統の七夕飾りづくりは例年より1カ月半遅れ、デザインは抑え気味。一方で「復興を祈る短冊を届けたい」と全国から支援の声が集まっている。開催は8月6〜8日。復興への願いが込められたまつりとなる。
商店街などの七夕飾り約3千本のうち、3分の2の制作を受注している仙台市の老舗「鳴海屋紙商事」。作業場では、従業員の女性らが赤や青、黄と色鮮やかな吹き流しやくす玉を和紙で丁寧に作っている。
七夕飾りは例年、3月中旬に作り始める。しかし、大震災で本社の外壁が崩落。在庫の紙の束は崩れ、半分は使い物にならなくなった。親族が亡くなったり、行方不明になったりした従業員もいる。
震災直後、食料の調達に走った鈴木敏夫社長(59)が、山形県まで米やリンゴを取り寄せに行った。同市青葉区に仮事務所を構え、通常業務に戻ろうとしていた4月7日、県内を震度6強の余震が襲い、被害が拡大。業務に戻れたのは5月の連休明けだった。
例年なら順番に進めるデザインの決定や材料集めを同時並行で開始。休日返上で作業が続く。「仙台は頑張っていると意思表示したい」と例年より豪華で明るい色の飾りを発注する商店も一部にあるが、多くは例年より2〜3割予算を抑え、シンプルなデザインの注文だという。
一方で相次いでいるのが県外からの支援の声だ。7月に大阪市の四天王寺で開かれるイベント「七夕のゆうべ」では、実行委員会が仙台の七夕飾りを30個ほど注文し、来場者に復興への祈りを短冊に書いてもらって仙台に送る。委員長の家田裕光さん(47)は「同じ日本人として支えていく意思を伝えたい」と話す。
「短冊を送りたい」「仙台七夕まつりに行くようPRしたい」との声は神戸の商業施設や東京・新宿の百貨店など各地から寄せられ、米国など国外にも及ぶ。神戸の商業施設の担当者は「私たちも震災を経験した。復興には長い道のりが必要で、できる支援を続けたい」と話す。
「七夕飾り作りを手伝いたいので教えて」という要望や、「(名物の七夕飾りの)吹き流しに使って」と千代紙の千羽鶴を送ってきた人もいる。職人を派遣したり、色や形のそろわない千羽鶴を飾りに仕立てたりするのは手間がかかるが、鳴海幸一郎統括本部長(43)は「ありがたい。せっかくの気持ちは、むげにはできない」となるべく応えるつもりだ。
仙台七夕まつり協賛会は今年の仙台七夕のテーマを「復興と鎮魂」とした。会場となる市中心部には、各地から送られてきた短冊を飾るコーナーを設ける計画だ。(千葉恵理子)