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「みなし仮設」の民間賃貸足りない 家賃つり上げる例も

2011年6月8日10時34分

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図:賃貸マンションの在庫件数の推移拡大賃貸マンションの在庫件数の推移

 仮設住宅がわりに自治体が民間賃貸住宅を借り上げる「みなし仮設」制度の影響で、仙台市など東北地方の都市部で賃貸物件が枯渇している。制度の利用者に対し、家主側が家賃をつり上げたり、入居を断ったりするケースもある。宮城県は業界団体を通じて協力を求めている。

 「大家さんに『借り上げ制度なら嫌だ』と言われまして。お力になれず、すいません」。5月末、宮城県石巻市の男性(42)は、仙台市の不動産仲介業者から入居審査に通らなかったとの報告を受けた。

 住んでいた借家の1階が津波で大破して住めなくなった上、勤めていた水産加工関連会社を解雇された。仮設住宅を申し込んだが、4月末に宮城県の借り上げ制度を知ってキャンセルし、賃貸住宅を探し始めた。だが、長女(11)が通う学校などの条件を満たす物件は、ほとんど残っていなかった。5月中旬、希望していた仙台市内のアパートが別の入居者に押さえられた後、家主側が同じアパートの別の部屋を、家賃を1万円上げて提示してきた。

 「石巻には仕事が無いし、仮設住宅もいつ入居できるか分からない。被災者だからってどうしてこんな目にあうのか」。仙台市の「みなし仮設」の申し込みは10日まで。それまでに見つからない場合は、再び仮設住宅の抽選に申し込むか、半壊した借家に住むしかないという。仙台市のアパートの家主は朝日新聞の取材に、「家賃は需給バランスで決まる。何も悪くない」と繰り返した。

 仙台市内の不動産業者によると、借り上げ制度は仮設住宅と違って職場や学校などの条件に合う物件を自分で選べるため人気が高いという。宮城県によると、申請件数は5日時点で7千件以上にのぼる。

 不動産の流通情報を扱う財団法人・東日本不動産流通機構によると、仙台市の賃貸マンションの在庫件数は2月末に1595件あったのが、借り上げ制度が周知された4月末には597件、5月末には501件と昨年の3〜4割ほどに減った。盛岡市や福島市も2月末から減る傾向だ。仙台市の不動産会社「マルカ商事」の役員は「ファミリー向けの手頃な物件はほとんど残っていない。うちは賃貸仲介の仕事自体、今はやめている」と話す。

 自治体による借り上げ制度は、期間が2年間と限られていることや、仲介手数料が通常の約半分という条件のため、「長期の入居者を希望する家主や、手数料を稼ぎたい仲介業者が敬遠する」(仙台市の業者)。

 宮城県宅地建物取引業協会には、家賃つり上げや入居拒否などのトラブルが多く寄せられている。協会事務局は「家賃の値上がりは市場原理だからある程度はやむを得ないが、行政も民間契約の実態を知らず、制度を決めてしまった部分がある」と指摘する。

 宮城県保健福祉総務課は「家主や業者を指導できる立場にないので業界団体を通じて協力を求めている。前例のない大災害の被災者救済の制度という趣旨を理解してもらいたい」と話している。(中村信義)

    ◇

 〈民間賃貸住宅の借り上げ制度〉 東日本大震災の被災世帯が入居する民間賃貸住宅を、岩手、宮城、福島の3県が借り上げ、一定額の家賃や共益費などを2年間負担する制度。対象者は災害救助法で定める仮設住宅と同じで、国費と県費でまかなわれる。負担額は世帯人数や間取り、市町村の家賃相場によって異なる。自治体負担の上限は仙台市の場合、2LDKなら8万8千円、3LDKなら8万9千円。

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