2011年6月5日12時13分
「離れていても、つながりを持ち続けよう――」。福島県南相馬市で活動するNPO法人が、情報誌「しんさいふっこうニュース めぐりあい」を発行している。東日本大震災と原発事故で県外に避難した人と同市で暮らす人が、お互いの状況を伝え合う情報誌で、復興に向けて共に歩みたいという願いを込めている。
NPOは同市原町区で地域おこしの活動に取り組んできた「はらまちクラブ」で、理事長の江本節子さん(64)が「苦しい時こそ、地域を元気づけたい」と始めた。4月22日に創刊し、隔週で出している。
同市で、市外に避難しているのは約3万3千人。仕事の都合で、離れて暮らす家族も多い。言葉も交わせないまま、突然、友だちと別れた子どもたちもいる。
江本さんは「全国に散った市民が絆を保ち続けるには、情報の共有が必要」と考え、市外や県外に避難した人たちの近況も分かる情報誌にした。
5月23日号の「こどもニュース」では、緊急時避難準備区域内にある市立石神第一小学校が、区域外の体育館で授業を再開した話題を紹介。同時に、同校出身で今は県外で暮らす子どもの声も写真付きで載せた。大分県別府市に避難した小学5年の女児は「みんなも元気で頑張って」。北海道函館市の小1男児は「早くみんなに会いたいな」とつづった。
取材には、市外・県外にいる避難者に「特派員」として協力してもらう。県外の特派員約30人のうち5人ほどは、原発事故などで避難した人たちだ。
江本さんの長男の妻潤子さん(38)もその一人。自宅は損壊を免れたが、幼い子ども2人に原発事故の影響が及ぶのを心配して、今は名古屋市南区の公営住宅にいる。地元に残ることを選んだ節子さんとは、別れて暮らす日々が続く。
23日号では「名古屋の学校はたのしいです。でも、ときどき、はらまちがこいしくかんじます」と、長女の遊(ゆう)さん(7)の声を紹介した。
潤子さんは、愛知県内に住む南相馬市出身者の声をもっと伝えたいと、交流会などに足を運び、同郷の避難者を捜している。潤子さんは「みんなが今、どんな生活をしているのか知りたい。一緒に話をするだけで元気が出ると思う」。
情報誌はA4判4ページ。南相馬市内では毎号約3千部刷り、避難所や学校、飲食店などに置いてもらう。市外・県外では、避難者のほかにもNPOの活動を通じて交流があった人らに協力を求め、ホームページ(http://npoharamachiclub.jp/)からデータを印刷し配ってもらう。
同NPO(090・8258・0840)は避難している南相馬市民に情報提供を呼びかけている。愛知県内への避難者は江本潤子さん(info@mamakon.com)へ。