2011年6月1日18時35分
東京電力福島第一原発事故による放射能汚染で、水産庁などが魚類に含まれるストロンチウムの検査を始めたことがわかった。食品の検査はこれまで放射性ヨウ素とセシウムが対象で、ストロンチウムは初めて。また、海産物調査で海の汚染が海面近くから海底まで広がったことが判明し、海藻の検査も強化する。
ストロンチウムは水に溶けやすく、半減期が29年と長い。性質がカルシウムに似て魚類の骨にたまりやすく、人間が食べると同様に骨にたまって白血病の原因にもなるとされる。
今回、ストロンチウムを検査しているのは原発の沖合で捕獲されたカタクチイワシやコウナゴ(イカナゴの稚魚)。小型の魚で、骨も含めて全体が食用となっている。
水産庁と各県はこれまで、魚類についてセシウムがたまる筋肉の部分だけを分析してきた。だが、ストロンチウムが海水から検出されるようになり、「骨も含めた検査が必要」との指摘が出ていた。検査結果が出るまでには1〜2カ月かかるという。
一方、海藻の検査の範囲や検体数を広げるのは、海藻が放射性物質を吸い込みやすく、汚染の指標になるとされているためだ。
これまで、海水魚で放射性物質の基準を超えたのは、海面近くで群れるコウナゴやシラスだけだった。しかし5月以降は、ヒラメやアイナメといった海底近くに生息する魚でも、基準内ではあるが比較的高濃度のセシウムが検出されている。このため、海面から海底まで幅広い調査が必要と判断したという。(大谷聡、井上恵一朗)