2011年5月31日0時52分
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は30日、東京電力の長期会社格付けを「BBB」から5段階低い「Bプラス」に格下げした。銀行借り入れを含む総合的な信用力を示すもので、「投機的」な水準となった。
既に発行している社債については、債務不履行の見込みが銀行借り入れよりは小さいとして「BBプラス」への下げにとどめたが、これも「投機的」だ。
「Bプラス」は債務の履行能力はあるが、事業環境などが悪化すると損なわれやすい水準。投資家が社債などを買う際に「投機的要素が強い」とみなされる。原発の事故に伴う損害賠償の枠組みが正式決定する時期が不透明なうえ、債権放棄や既存融資の金利減免など、S&Pが「経営難に伴う債務交換」とみなす取引銀行による金融支援の見込みが高まっているためだとしている。S&Pによる東電の格下げは震災後4度目。震災前までは「AAマイナス」だった。
格下げを受けて、金融市場に動揺が広がる可能性がある。東電は国内最大の社債発行企業だが、震災後は投資家の不安が募り、東電をはじめ多くの企業が社債の発行を見合わせていた。最近は徐々に正常化しつつあったが、再び不安が強まれば、企業の資金調達に悪影響を与えかねない。
ただ、東電に総額4兆円近く融資している金融機関は当面、事態を静観する構えだ。大手銀行は「東電の資金繰りをこれまで通り支える」(役員)としており、融資残高の維持など金融支援に応じる姿勢も崩していない。