2011年5月30日22時16分
枝野幸男官房長官の30日午後の記者会見は次の通り。
【第2次補正予算案】
――きょうの委員会で「早く予算措置を取らなければ復旧に支障が出る問題を集約している」と発言したが、今国会での2次補正提出も視野に入っているという理解でいいか。
「従来から申し上げていることと変わりない。従来から考えていることと変わりない」
――発言の趣旨は。
「申し上げた通りだ」
【内閣不信任案】
――野党が不信任案提出の構えを見せているが、政府の対応は。
「与党において粛々と否決して頂けるもの確信をしている」
――野党は菅首相では復興・復旧が遅れると。復興・復旧の観点からの不信任をどう考えるか。
「不信任案を出す権利は野党にあるので、野党が様々な判断で出すことは、与党、政府として何か申し上げられることではない。ただ、復興・復旧に遅れのないように粛々と否決して頂けるものと確信している」
――野党は菅さんでいればいるほど復旧が遅れる、という見方をどう思うか。
「野党には野党の立場があるので、野党の立場からの発言があるのだろうと思っている」
――長官は震災で解散権は制約されないと言うが、岩手県知事は今日の会見で「岩手では選挙のできない選挙区がある。衆院選は被災者切り捨て解散だ」と発言しているが、受け止めは。
「私は内閣の法令解釈の担当者として、憲法上の論点についてお答え申し上げたものだ」
――憲法上はともかく、実際上、被災地で解散総選挙は困難と考えるか、選挙は何よりも優先されるものと考えるか。
「そもそもこんな時期に内閣総理大臣を変えようとすること自体が困難だ」
【土壌汚染】
――原子力委員会の河田委員が福島第一原発20キロ圏外の複数の地点から1平方メートルあたり148万ベクレル以上のセシウムが検出されたとのリポートを発表したが、政府として20キロ圏内の警戒区域の拡大はあり得るか。土壌汚染の対応は。
「まず、原子力委員会に報告された河田さんの意見では、そもそもこういう記載になっている。チェルノブイリ事故で設定された汚染のレベル区分と、それに基づく対策は、放射線防護上はより安全な設定であったが、その便益に比べ、住民の生活への過大な負荷を強いる結果になり、今日では最適化や正当化の視点から問題があったとの評価がなされている。我が国としては、その後に整備された国際的指針をもとに最適化や正当化の観点で、バランスの取れた新たなレベル区分設定を行うことが望まれるというのが、河田さんの報告自体にある。政府としては、それぞれの地域の実際の空間放射線量をしっかりとモニタリングして、国際機関等の基準などに基づいて健康被害が生じることがないような避難区域、計画的避難区域の設定とお願いをしている。さらに当然、半減期の長い放射性物質が土壌等にあるということは、放っておけば長期にわたってそうした放射線の影響受けることになるので、除染や土壌改良をしっかりと進めていく必要がある。すでに農水省を中心に飯舘村においては計画的避難をお願いすると同時並行で、土壌改良に向けた調査検討を進めて頂いている。基本的には現在の避難区域の設定で健康への影響については心配ないと思っているが、これができるだけ早く戻って頂けるように土壌については河田先生のリポートも参考にしながら、改良に向けた努力を、収束を待たずに出来るところから進めて参りたい」
――警戒区域の拡大の必要はないか。
「もちろん常に空間放射線量のモニタリングは継続して強化している。そうしたものに顕著な変化がない限りは、現在の区域の設定で問題ない。むしろ今後、原子力発電所を早く収束させることで、空間線量等を見ながら、出来るだけ縮小していけるように努力したい」
――今月をメドに計画的避難区域の避難完了ということだったが、進み具合は。
「特に地元の皆さんには大変厳しい中でのご苦労をかけている。政府としても最大限の支援をしているが、なかなかすべての皆さんに計画的避難区域から完全に出てもらうことは困難な状況にあると報告を受けている。ただ、一方で全体としては、年間20ミリシーベルトを超える可能性が広がっている地域だが、特に放射線量の高い地域、つまり早い段階で20ミリシーベルトに達する恐れの高い地域とか、あるいはお子さん等についてしっかりと考慮しながら、地元の皆さんとご相談しながら、出来るだけ早くということで作業を進めている」
【君が代訴訟の最高裁判決】
――君が代斉唱で起立を命じた校長先生の職務命令について最高裁が憲法違反ではないとの判断が出たが、政府の見解は。
「判決の結論部分について承知しているが、どういった論理構成でのどういった内容の判決かまだ承知していない。ただ、いずれにしても最高裁の判決だ。司法部における終局の裁判だ。憲法判断権をもっている機関の判断だ。その内容については精査をして重く受け止めるべきだと考えている」
【次の総理候補に枝野氏】
――FNN・産経新聞世論調査で枝野さんが次の総理候補ナンバー1になった。
「いつも申し上げているが世論と世論調査。世論調査は世論を推測する有力な手段の一つではあるが、世論調査が世論とイコールでないと思っているので直接のコメントは避けたいと思うが、勘違いをしないように気をつけたい」
――同調査では政府発表を信頼できない人が8割に達している。一方で政府発表している枝野さんの支持率が高いことをどう考えるか。
「まず具体的な世論調査の数字については先程申し上げた通りで、あえて繰り返さないが、ここまでの政府、あるいは政府が関与している東京電力からの発表については、残念ながら途中で過去に発表していたものが誤りであった等の事実が明らかになるなど、国民からは信頼していいんだろうかという疑義をもたれることは、ある意味で当然だろう。ただ一方で政府、少なくとも官邸の首脳部としては国民に対する正確で迅速な情報公開ということに全力をあげてきている。この全力をあげていることについては自信をもって皆様方に申し上げられる。さらに情報の集約、整理、発表のあり方というものについて改善することによって国民の信頼を得られるよう努力をしてまいりたい」
【復興構想会議】
――復興構想会議はなぜ非公開なのか。
「発言要旨は発表を事後的にすることになっているんじゃなかったかなあと思うが、それぞれの委員の皆さんに忌憚(きたん)なく発言を頂くということの観点から議長中心にそういう判断をされていると理解している。当然そこでまとまる内容はもとよりだが、議論の過程についても公文書管理と情報公開のルールに基づいて、同時ではないにしても国民に公表していく必要があると思っている」
――税と社会保障の一体改革は2日に全体像が示され、政府与党の新たな協議機関が設置されるとのことだが、意味合いは。
「案がそう遠からず示されるというふうには承知しているが、これから案が示された上での議論が始まる。案をつくっている段階だと思うので、私としては具体的にコメントするほどの情報に接しているものでない。それから、新たな会議体を設置するかのような報道がなされているが、基本的には従来の検討の場での議論を進めていくにあたってこの間もそうしてきているが、全員で集まる以外の場面というのもこれから6月メドとしているので、鋭意取りまとめに向けて努力していかなければならない段階なので、常に全員集まってという場以外の検討の場も必要ではないかというような趣旨のことは報告を受けている」
【復興特区構想】
――自民党は復興庁が担う権限として特区の事務をあげていたが、復興特区限定の話なのか。実際の権限も総理から復興庁の長に移すのか。
「むしろそれは自民党にお尋ね頂いたほうがいいのかなと思っていて、様々な各党の意見を踏まえながら政府としてどういうことなら可能かということについてお答え申し上げたところだ。実際に復興庁を検討するわけだが、設置する場合に、復興庁なり復興院なりという機関が各省と横並びになるのか、内閣総理大臣を長とする機関にするのか。それによって実は庁のほうが弱いように見えるが、トップが内閣総理大臣、内閣府の長たる内閣総理大臣になるので、人格が内閣の長たる内閣総理と同一人格なので、かえって政治的には強い影響力を持つのではないか。各府省と横並びにすれば、各府省大臣と横並びになるので、かえって力が弱くなるのではないかというような行政法というか、行政学の実態の所などをいろいろ検討すると現時点では今の本部という構想で強力な事務局をおくと、庁に準じるような強力な事務局をおくというのが一番実は強力に縦割りを打破できるのではないかと思っているが、国会での議論を踏まえて対応させて頂きたい」