2011年5月30日9時36分
岩手県の被災地で津波による浸水を免れた高台の土地が、一部で値上がりを始めた。政府や県が、住宅や公共施設の「高台移転」を検討していることが背景にある。投機目的の買い占めなどに発展すれば街の再建の障害になるため、県は実態調査に乗り出した。
朝日新聞が県沿岸部の複数の不動産業者に取材したところ、大船渡市で震災前に坪10万円前後だった宅地が、13万〜15万円に上がっていた。主に市内を南北に走る国道45号の山側の地域で、不動産業者によると、大手プレハブメーカーが造成を打診してきた例もある。地区によっては「バブル期の価格水準に戻りつつある」という。
宮古市や釜石市でも、一部の高台の宅地を中心に2割前後、地価が上がっている。山田町でも売れ残っていた坪8万円の土地2区画が10万円で売れた。
広範囲が浸水した三陸沿岸では、住宅を浸水エリアよりも高い場所に移す案を政府の復興構想会議が検討。県の復興委員会が作成中の復興ビジョンでも、高台移転案が示されている。
一方で、この地域はリアス式海岸で平地が少なく、限られた高台に需要が集中する可能性がある。これに乗じた投機的な取引で地価が過度に上がらないよう、県は取引や価格の動向を調べ、警戒している。
国土利用計画法では、一定面積以上の土地を買う場合、知事への事前届け出を義務づける「監視区域」制度がある。投機目的の買い占めなどがあれば、指定を検討する方針だ。(疋田多揚、山下剛)